カテゴリー:中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王

2005年11月14日 (月)

「国家の自縛」 佐藤優著 産経新聞社 1575円

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 まさに、国士だと思うよ。国益を最優先に考えた立派な人物だな。
 こんな人が外交のステージからはじき出されるとしたら、国家の自縛というより国家の自爆じゃないか。
 「外務省のラスプーチン」と異名をとったあの佐藤さん。鈴木宗男さんとコンビを組んでたあの佐藤さん。
 前作「国家の罠」に続く第2弾です。

 日本という国の悲しいところは、マスコミが世論をリードできないところにあるんじゃないかしらん。リードできず、ミスリードする。
 「識字率5%」と某外務官僚が言ってたけど、たしかにそのくらいなのかもしれません。字は読めるけど、中身は理解できない。まして、考えない。小泉政治の成功を見ても、「世論はワイドショーと週刊誌の中吊り広告が作ってる」というのはあながち外れてないのかもしれませんな。
 けど、それをマスコミは糺しているのかというと、どうもそうは思えない。正論よりもウケを狙う。まっ、商業新聞だからね。「社会の木鐸」なんて、青年の主張じゃあるまいし、そんなものより一部でも多く受ける紙面を考えなくちゃ・・・ってか?

 「あいつが悪者なんだよ」「ぜーんぶ悪いのはあいつ!」って、二者択一しか選択できないんだもの。勧善懲悪劇が好きなんだもの。そんなときに、「いや、そこをよく考えみましょうよ」「本当にこれは犯罪なのかどうか」って言ってもね。
「そんな難しいこと、わかんない」
 それが良くも悪くもわが国民性なのね。

 けど、ブームが醒めてくると、ようやくチラホラと正論が出てくる。揺り戻しっつうの? 「ごめん、反省してる、あのときはしょうがなかったんだ」って浮気がバレた後みたいに平謝りするか、「ぼく、関係ないもん。あのときの担当じゃないもん」としれっとするか。
 まっ、どっちだっていいんだけど、ようやく正論を受け容れるというか、ここは冷静になって本人の声を聞いてみようじゃないか、という姿勢になってくる。
 タイミングとしては遅いんだけど。
 
 権力にとって、いちばん簡単なのは「流れ」を作ること。そして、「流れ」に乗ること。
 佐藤さんも鈴木さんもそれでやられてしまいました。国民が真実を知るには情報が無さ過ぎた。マスコミが一方的な報道しかしなかったからね。
愚痴ばかりいってもしょうがないや。

 さて、佐藤さんが逮捕された容疑は「背任」と「偽計業務妨害」です。
 で、東京拘置所で512日間の拘留生活。一審は懲役2年6カ月。執行猶予4年。
 拘置所には長くて2カ月と考えてたみたい。しっかし、長かったねぇ。

前作「国家の罠」を参考に、外務省をめぐる一連の事件をシンプルにまとめるとこうなるんじゃないかな。
 ・・・人間の嫉妬。
 もちろん、機密費詐取事件やサミットタクシー券詐取事件によって世間からバッシングを受けて弱体化した外務省に田中真紀子というパワフル女史が乗り込んで、引っかき回した。で、それに恐怖感を覚えた外務官僚が鈴木宗男さんを利用して放逐させた。結果、知りすぎた男である鈴木さんも同時に放り出した。
 「勝ったのは百姓である」と映画『七人の侍』で最後の最後に言ったのは志村喬だったけど、最後に勝ったのは外務省という村であり、官僚という百姓だったのよ。

 嫉妬というのはね、自分の愛すべき父親田中角栄を裏切った橋本派の政治家に対する真紀子さんの恨み辛み。
 対ロシア政策、言い換えれば、日ロ平和条約締結へと動いていた鈴木さん、東郷さん、そして佐藤さんラインに対するロシアスクールの嫉妬。
 この2つがタイミング悪く重なってしまった・・・ということじゃないかなぁ。
 嫉妬というのエネルギーはものすごいでしょ。

 人間には2種類いて、嫉妬をする人、しない人がいるわけ。だれでも嫉妬くらいはするんだけど、その濃淡が違うのね。
たとえば、鈴木宗男という政治家は嫉妬や恨み辛みとはまったく縁遠かった人。後輩が先に大臣になったとする。すると、「羨ましい」「ちくしょう」「オレのほうが!」とは思わない。「もっと勉強しなくちゃダメだな」と自分を叱咤激励するタイプだというんだな。
 これはね、少し見ればわかります。前作「国家の罠」で佐藤さんも述べてたけど、「はじめは私の前でそのような感情を隠しているのだと考えていた。しかし、つきあいがいくら深くなってもその類の話(嫉妬、恨み辛み)がない」ってね。

 政界、官界は男の焼き餅の世界。だから、人一倍、焼き餅と嫉妬、恨み辛みの世界なんだよ。
 にもかかわらず、それがない。東郷さんにも佐藤さんにもないの。あっても薄いの。
 で、どうなるか?
「人間は嫉妬によって動かされている動物だ」ということに気づかないから脇が甘くなる。自分にはないものだから、他人にもないと思っちゃうのね。これが命取りになります。

 国策、政治の世界にブライベートの感情をもってくるなんて、たしかに姑息なんだけれども、それが平均的な官僚なわけです。
 基本的に清朝が崩壊する時、ぴーぴー泣いていた宦官とかわらないんです。ちょっと言い過ぎか。
 佐藤さんは嫉妬とは指摘していません。けど、国策に対する見解の相違や正義感といった高尚なものではなく、私利私欲、権力欲、昇進欲、そして焼き餅、嫉妬などがどろどろと入り組んだものではないかなと、わたしは感じたね。

さてさて、政治家は市場原理、競争原理で動きます。だから、情報のプロとすぐに結びついてしまうわけ。けど、官僚は居心地のいい水槽がなければ生きていけない。これこそ、国益だと信じてますからね。
 真紀子さんがやったことは、水槽をぶっ壊すこと。だから、官僚は一部の人間(それまで省内で冷遇されていた人間)を除いて大反対するわけ。
 では、鈴木さんのやったことは?
 水槽に扉をつけたこと。中の金魚をあちこちに動かしたこと。これが、まさに政治。だけど、金魚についてあまりにも知りすぎた。金魚にだって隠しておきたいことがたくさんあるわけ。たくさんヤバイことやってるんだから。時々は助けてもらったけど、いまなら、この知りすぎた飼い主を追い出せると気づいた。
 それが、鈴木さん、東郷さん、佐藤さん失脚の原因となるわけ。

しかし、真紀子さん、鈴木さんというタフな政治家を相手に追い出してしまうんだから、外務省の情報捜査能力と謀略能力は凄い。このパワーが外交に活かせれば、懸案の事案などさっさと解決できるんだろうけど。
 官僚が力を発揮するのは、哀しいかな、そういうモチベーションではないんです。自分たちの既得権益が侵されそうな時。この時こそ、一致団結するわけ。哀しいかな、それが現実のようです。

 それにしても、外務省っていろんなタイプの人間がいますね。漫画になりそうな高級官僚がたくさん紹介されてます。こんな人が交渉なんてできるんだろうか。「やっぱり、頭の中は鹿鳴館レベル」という人も少なくなかったよ。

 佐藤さんは「哲学のある戦略家」ですな。ヒートアップしない。冷静に先を見通す力がある。
 で、いろんな知恵をたくさん紹介してます。ビジネスでも役立ちそうなものを少し披露しましょうか。
 「妥協に関して、外交官は51%を獲得しようと努力するが、これでは本当に難しい交渉はまとまらない。むしろ、相手に51%を譲り、日本側は49%でいいというハラを括らなければ」(東郷談)
人間の認識は非対称的なのよ。こちらが49%と思っていても、客観的には70%くらいの要求をしてるわけ。
「東郷さんは若手官僚も登用するし、歴代総理や鈴木宗男さんの前で平気で土下座できる人だった。それは本質的なところで矜持があるから、小さなプライドを捨てることができたのだと思う」
 「(東郷さんは)攻めには強くても守りには弱い。攻める過程では平気で命を捨てられる人だった。だが、外務省(本文中では実名)が後ろから撃つとは思わなかったでしょう。内側から壊れてしまった」

 「判断を間違えると、おかしな行動をとるんです。憎しみは人の目を曇らせます。だから、自分のために汝の敵を愛さないといけないんです」

 「いまの日本外交のいちばんの問題は、不作為です。よけいなことを背負い込むのは嫌だと。だから、私はいまだに外務省の処分を受けていない。処分するには聴聞しないとけいけない。聴聞になった場合、マスコミに公開した形で行うことを弁護士を通じて外務省に申し入れた。そこで私はいままで黙っていたことを話す。そう伝えたら、外務省は処分について一切、言ってこなくなった」

 「官僚の中にいて、私は1つの原則を守って行動してきました。本当のことは全部は言わない。マスコミに間違って受け取られてしまうこともあるが、それはやむを得ない。しかし、積極的なウソだけはつかなかった。いまの外務省の人事当局を信用していない理由は、ウソをつくようになったからです。そのウソが国益に基づいてやむを得ずつくウソではなく、個々の官僚が自己保身のためにウソをつく」
 
 「外務省の中でいちばん間違えているのは。ポストの公募制です。情報や外交の世界で自ら近寄ってくるものはろくなもんじゃない、というのが国際スタンダードなんです。課員による課長の評価。これは下に阿る結果になる。さらに査察監察官室への密告の奨励。川口順子元外相の秘策。これは日本の官僚史に残る傑作です。赤いTシャツを賞品にした川口賞を設けて職員を競争されている。外部から見れば笑い話ですが、水槽の中ではナチス高官たちが勲章を巡って争っていたのと同じ構図です」

 「金日成著作集でもっとも重要なのは42、43、44巻のソ連崩壊前後を熱かった部分です。私は独房でそれこそ端から端までなめるように読みました」
 この中には、日本との関係を良くしなければならないという部分がけっこうある。
 平壌と日本との間でいちばん問題なのは、金正日が考えていることがストレートに伝わっているかどうか、という担保がないことですね。曲らずに伝える道具、つまり、電話が大事なわけ。外務省の人間が電話になればいい。
 誘われたらつき合う。しかし、判断はしない。自分の意見も言わない。そして、「将軍様のスケジュールを管理している補佐官に会いたい」とだけ言う。
 「伝えられたことはねじ曲げずに官邸にちゃんと伝えます。官邸の情報も少しも曲げずにお伝えします。それ以上のことはしません。割引もしません。私は電話です」
 こういう電話を作っておかないと、複雑な交渉の間に入って自己の利益を図っていく人間やグループが必ず出てくるわけ。
 第三国など巻き込んだら、ますますそういう輩に食い物にされてしまう。情報ブローカーが外務省にも政界にもいっぱいいるわけですな。

朝青龍って、モンゴルの英雄だけど、あの一族はモンゴルの共産政権時代の秘密警察と公安組織の人たちなんですね。大変なエリート一族で、情報ネットワークを持っている。
モンゴルは、北朝鮮に公館を置いてます。北朝鮮も重視している。
 で、モンゴルは日本は大切なODAのドナーなわけ。
 モンゴルにとって、最大の敵国はどこか? 中国ですよね。
 北朝鮮にとっても、いちばんの脅威は中国のはず。高句麗を巡る歴史問題でもそれは明らか。

 呉儀副首相が小泉首相との会見をドタキャンして帰国したことがありましたね。
 「本当に怖い人は怒った時も冷静なんです。静かに、しかし、効果的に怒りを表します。中国のやってることは限度を超えてます。日本への侮辱です。
 しかし、中国はすべて計算尽くでやっている。靖国問題は深刻なんだと伝えるために、首相に直接会うほうが効果的なのか、ドタキャンが効果的なのかを計算してます。日本はフラフラしていて、国論も割れているから侮辱的なほうが効果的だと読んだ」
 ここでいくら中国とやりあっても、向こうの思う壺。
 ただ、この後、局面が変わります。ドタキャンの晩以降、彼らは新華社に「小泉首相の靖国発言は良くない」「私は重大な公務なんて言っていない」と当初の中国政府の説明を否定してきた。つまり、中国はウソをついたわけ。ウソをついて外交のまともな行事を潰したわけ。
 そこをとらえて、外務省は正式に抗議すべきだった。「良いか悪いかではなく、ウソをつく国とはゲームはできない。まずウソはつかないということをはっきり全世界に明示してください」
 こうすれば、百対ゼロで勝てた。だが、そこを責めなかった。それは外務省の基礎体力が弱すぎたからなんですね。

 まだまだたくさんありますが、このへんにしときましょう。詳しくは本文を読んでね。360円高。

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プロフィール

中島孝志(なかじまたかし)
 東京生まれ。早大政経学部政治学科、南カルフォルニア大学大学院修了。PHP研究所、東洋経済新報社を経て独立。経営コンサルタント、経済評論家、ジャーナリスト、作家 (ペンネームは別) 、出版プロデューサー、大学・ビジネススクール講師等ビンボー暇無し。「キーマンネットワーク定例会」(33年の老舗)のほか、
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 講演・セミナーは銀行、メーカー、外資系企業等で大人気。全国紙をはじめ専門誌、永田町メディア、金融経済有料サイト、大手企業広報誌から宗教団体機関誌などの連載を20年以上続ける。
 著訳書は330冊。ほかに電子書籍100冊。大臣や経済団体トップなど政財界をはじめとした要人プロデュースは延べ500人超。読書は年間3000冊ペース。落語と宝塚歌劇、大衆演劇、そしてシャンソンの熱烈なファン。
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