2010年11月22日「A SINGLE MAN」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 来週ウェスティンホテル(恵比寿)で打ち合わせがあるから、あそこの映画館にしてもよかったんだけど、根っからのせっかちなんでネットで検索。
 なんや、地元でやっとるやないか。

 ん? 行ったことないな、ここ。地図見て行きましたがな。ま、なんちゅうかほんちゅうか。せこい場末の映画館てヤツ? 入口に「2本立てではありません」だと。1本ごとの入れ替え制なら単館にすればいいのにねえ。そこはまあいろんな事情があるわけよ。



「ネクタイはウィンザーノットで」
 
 死に装束まで指定するジョンは、英国出身でいま、LAの大学で英文学を教えてる。白のボタンダウンに細身のネクタイ。靴はモカシン。スーツはブルックスブラザーズ。で、呑むのはビールかスコッチ。

 最愛のジムを亡くして8カ月。目覚めても虚無感しかない。宇宙は消え去り、時はあの瞬間から停止したまま・・・おかしきゃ笑うけどたんなる反応にすぎない。

 生きる意味がわからない。遺書も3通したためたし、保険証券、いろいろな鍵、そして自殺用の銃もすっかり用意。ベッドがいいか、シャワー室がいいか、それとも寝袋なんてどうかな、とシミュレーションを繰り返す。なんたって、1回しかできないわけだから、ああ間違えたでは済まないわけね。

 いよいよ迎える最後の日。

 いつものように大学で講義。課題図書を放り出して、ジョンは突然、「おそれ」について語り出す。学生たちの反応がいまいち。煙草を吸う女子学生までいる。けど、1人だけ熱い眼差しを向ける学生がいるわけですよ。

 先生が心配で・・・。教務課で住所を聞き出し、監視している様子。

 ついつい見過ごしてしまいそうだけど、ディテールまでかなりファッショナブルですよ、この映画は。
 なんたって、グッチを復活させ、イヴ・サンローランのディレクターをつとめ、5年ほど前に自分のブランドを立ち上げた、あのトム・フォードの初映画作品。考えてみれば当たり前ですわな(参考までに私の眼鏡もフレームはトム・フォード、レンズはHOYAでおます。どうでもいいけど)。

 テレビ画面からすると、時代はどうやらキューバ危機前後。つうことは、60年代初頭。なるほど、ファッションもケネディに似てる。
 トム・フォードお気に入りの小説家クリス・イシャーウッド(『ベルリン物語』の著者)の原作。主人公のジョンは「マンマ・ミーア!」のコリン・ファース。かつての恋人はジュリアン・ムーア(ハンニバル・レクターに愛されるクラリス役で有名かな)。

 この映画、日本ならやっぱ10〜20代に設定するでしょうな。とても50代を主人公になんてしないし、ましてや、ゲイなんて設定は無理でしょうな。

 さて今回、「中島孝志の 聴く!通勤快読」でご紹介する本は、『本は絶対1人で読むな!』(中島孝志著・潮出版社)です。続きはこちらからどうぞ。