2014年03月22日「家族熱」

カテゴリー中島孝志のテレビっ子バンザイ!」

 昭和53年のTBSドラマ。主演は浅丘ルリ子さん、ほかに三浦友和、三國連太郎、加藤治子、風吹ジュンさんなどなど。
 で、原作は向田邦子さん。。。とくれば、おもしろくないわけがありません。

 残念ながらビデオもDVDも発売されてないんす。じゃ、どうすんの? ありがたいっすね。ネットで見られるんす。TBSオンデマンドね。TBSならDMMでも見られますからね。


昔の俳優は老けて見えますな。子どもの頃から見てるから(年齢的に)下から目線なのかも。

 三國さん演じるゼネコン部長は50歳。浅丘さん演じる後妻は33歳。いやあ、その艶っぽさには惚れ惚れしまんな。まだ女優が綺麗だった時代でしたね。

 2人の子どもを置いて出て行った元妻が加藤治子さん。48歳の役。違和感あるわあ。計算すると当時56歳だったわけでね。落ち着いてます。いまから36年前のことっす。

 後妻は、身寄りがなくてね。自分の部屋もない叔父さんのとこで育ったから、なんとかはい出たくて、男のプロポーズを受けたわけ。連れ子を2人を育て、姑を看取り、舅の世話も引き受け。。。甲斐甲斐しい良妻賢母。ところが、あることから、男が元妻と何回か密会します。

 で、ばれちゃった。

 元妻と現妻との確執。翻弄される男たち。医師をしている長男とは7歳しか違わない。。。冷静だけど、母を女として見てしまう。

 女の心のひだの奥の奥まで引っ張り出しちゃう。これが向田作品の怖さ。たぶん女性が見ても怖さを感じると思うな。これはほかの女性脚本家では書けんわなあ。

 たとえば後妻の友人(編集者。たぶん向田さん自身)が興味津々で不倫相手と元妻のバーに行くわけ。

「別れ方のコツ教えてください」
「私、その資格ないなあ」
「・・・」
「昼間はいいのよ、夕方がいけないの。買い物かご下げた主婦でごった返すあの時間が一番危ないの。そのブリ6切れ下さいって、言いかけて、なに言ってるんだろ私、って笑ってごまかすけど、涙が流れてくるの」
「私、ずっとひと切れでした。これからも・・・」
「お魚なんか買わないことよ」 

 セリフがデリケート。語りが繊細つうか微細。女の生活をプレパラートに移して一こまずつ顕微鏡で眺めてるような感覚にとらわれてしまいますな。

 浅丘ルリ子さん。向田作品初登場ドラマ。後半になると、主役は元妻=元母の加藤さんに代わっていきます。どうも向田さんは浅丘さんの演技が気に入らなかったようですね。で、加藤さんのほうにスポットライトを浴びせちゃった。

 この女。渋谷の猥雑な通りでバーを営んでるんだけどね。元夫と息子たちへの熱い熱い熱い「家族熱」にやられてしまって、心のバランスが崩れてしまいます。ここからが向田ドラマの本領発揮。いっきに爆発して狂いだします。鬼気迫ってきます。女がいかに怖いかわかります。

 全14話。虜になります。あ〜あ、4冊も書かなくちゃいけないのに。緊急プロデュース3冊も抱えてるのに。4月から札幌(第1期)、大阪(第3期)、名古屋(第2期)の原原がスタートするっつうのに。「京都舞妓HAAANツアー」やっとる暇があるんかいな。ま、行くけどね。そうそう、余市にもウイスキー買いに行かなくちゃ。