2018年03月10日アカデミー作品賞・監督賞「ザ・シェイプ・オブ・ウォーター」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 えっ、「スリー・ビルボード」じゃないの? シェイプ・オブ・ウォーター? なに、それ。半魚人とおばはんの恋物語? ふ〜ん、「リトル・マーメイド」や「美女と野獣」ちゃうんやからのーーー。

 近所の映画館でレイトショーやってたんで、ウォーキングのついでに行きましたがな。

 はい、これっす。お見それいたしました。こんだけ重たいテーマをラテンにシャンソンにスタンダードに、あれこれ素敵な音楽をさりげなく入れてミュージカル風に、それでもスリルとサスペンスたっぷりのラブストーリーへと仕立てあげてしまいましたなあ。

 実に遊び心たっぷり。


 
 ところで、主演のサリー・ホーキンスってさ。『わたしを離さないで』(カズオ・イシグロ作品)の舞台となる「臓器提供クローン養成寄宿学校」で校長と対立して辞めさせられる教師を演じてたよね。

 今回は女の魅力ゼロ、幼い頃のトラウマで声が出ない。性欲はそれなりにあるごくごく普通の女。勤め先(政府の研究開発機関)で掃除のおばさんとしての働きぶりにはなんの支障もないし、友達は2人しかいないけどこれまたなんの支障もない、という生活ぶり。

 贅沢はできないけどなんとか生きてきた。平々凡々に生きられればOKの人生。

 それが一変しちゃった。「恋」しちゃったから。

 その彼つうのが、米ソ冷戦下、アマゾンで捕らえられ運び込まれた半魚人。原住民からは「神」と崇められてる存在。

 「殺して生体解剖しては?」と提案するエリート軍人。「犬を宇宙に飛ばしたソ連に対抗して、これを宇宙に送りましょう」と主張する研究機関の博士(実はソ連のスパイ)。五つ星の元帥は生体解剖に決めます。
 
 「逃げさせなくちゃ」 

 組織も資金もある連中相手に出し抜く掃除のおばちゃん2人とリストラ絵描きジジイ。



 男と女、若者と年寄り、勝ち組と負け組。富裕層と貧困層、支配する人と支配される人、命令する人と命令される人・・・とかく分類したがるけど、マネーは人類を超える存在となりました・・・いや、なりませんね。

 「私は何? 私はしゃべれない。彼も言葉を話すことができない。私たちには何の違いもない」

 異物に過剰反応するのは細胞レベルでも人類レベルでも同じ。コミュニケーションすればわかるんだけど、防衛本能から敵対意識が先行しちゃう。

 とくに欧米の人間はそうなる。なぜなら人類がアフリカから世界のあちこちに散らばっていく過程で、あの連中は置いてけぼりを喰らった「棄民」なのよ。だから、人を見たら泥棒か殺し屋と思うし、敵か味方か、主人か下僕か、つう二者択一しかできない。

 何様のつもり? 「異物」を排除してきた連中だからこそ、これがアカデミー賞に選ばれたんだ、と思えてならないのよ。