2018年06月06日「29歳問題」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 まったく期待してなかった。というより、観るつもりもなかった映画。
 FBでは何回も書いたけど、そもそも落語イベントには2時間ありまして、「ちょうどええがな」つうんで入っただけのこと。

 大当たりぃぃぃ。



 この映画いいですよ。香港電影金像奨最優秀新人監督賞を受賞したらしいけど、元もとは監督のキーレン・パンが2005年から舞台で演じてたものでしょ。



 すっかりこの人が監督だと思ってたのがダブル主演の1人。クリスティ役のクリッシー・チャウ。あまりにも似てるんで錯覚してました。だって、この監督、めちゃ美形なんだもの。


だれかに似てるなあ。だれだろ、思い出せん。

 で、クリスティがパリ旅行中の間だけ住まわせていた大家がティンロ。この2人、誕生日が同じ。いま29歳。30歳目前つうこと。

 舞台では2役を演じてるんですよ。そのほうが観たいわな。つまり、映画の大ヒットで舞台に客が集まる、つう現象ね。

 05年香港。化粧品会社に勤務するクリスティ。容姿端麗の敏腕女社長をリスペクト。仕事にもやりがいがあるし、恋人や友人もいて順風満帆。
 
 で、部長にも昇進。

 それからストレスの嵐。恋人ともすれ違い。そこに来て、実父が呆けてきた。マンションも立替とかで追い出され、1カ月だけ、大家に紹介されたティンロの部屋に間借り。

 ティンロはコロコロ小太りで明るくて、恋に夢見る乙女。レスリー・チャンの『日没のパリ』が大好き。
 
 なんの悩みのないようにティンロだけど、クリスティは彼女の日記を見つけちゃう。まだビデオメッセージでしか会ったことのないティンロに、クリスティは感動するわけ。
 
 仕事、恋愛、結婚。29歳が抱える問題はたくさんあります。

 どうして彼女たちはパリに行ったのか?

 そういえば、昔、ヘミングウェイだったかな。『移動祝祭日』というエッセイがありましてね。

 「もし、きみが幸運にも青年時代にパリに住んだとすれば、きみが残りの人生をどこで過ごそうとも、パリはきみについてまわる。
 なぜならパリは移動祝祭日だからだ」

 このひと言にガツーンと来ましたよ。ベル・エポックとレ・ザネ・フォル(Les Années Folles 狂乱の時代)の端境期を過ごしたヘミングウエイの絶筆ですからね。

 彼女たちにとっても移動祝祭日だったんじゃないかな。よー知らんけど。


 今日の「通勤快読」でご紹介する本は「お祓い日和 その作法と実践」(加門七海著・352円・ダ・ヴィンチ)です。