2007年02月28日「アメリカ経済終わりの始まり」 松藤民輔著 講談社 1680円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 NYダウが540ドルも暴落しましたね。
 驚きました! 驚いたという意味は、まさかこんなにぴったり当たるとは、という意味で驚いてるんです。

 昨年、11月末にこんな本を紹介しました。「アメリカ経済終わりの始まり」という本です。発売1週間で紀伊国屋、丸善、ブッファスト等々で1位を独占しましたね。あの江原さんが2位でしたけど、ダブルスコアの差をつけて1位だったんですよ。

 この著者、外資系証券会社(メリルリンチ、ソロモンブラザーズ)で13年前、年俸2億円を得ていた伝説の人物。
 「日本のバブル経済は崩壊する」と確信し、さっさとペーパーマネーから卒業しちゃった。「0金利時代になる」「日経平均株価は8000円に下落する」「600の銀行が消える」・・・予測はピタリ的中!
 『ロンドン・エコノミスト』が「rich&rude」と早速、世界に紹介したことでも知られる金融界のキーマン。ジム・ロジャーズ、イアン・フレミング等々、金融界で名をはせた知人友人は数知れず。

 本人は現物経済、それも「金の時代」になるとばかりに金鉱山会社を実際に立ち上げてしまいました(株式会社ジパング)。去年、ネバダ州に年間2.2トンの金生産・埋蔵鉱量90トンの金鉱山を手に入れてしまう。

 世界の金融人脈との議論、ユニークな経済分析から得た結論が面白い。
「NYダウ大暴落・円安ドル高・東京市場1人勝ち」。
 
 ジョージ・ソロスとクォンタム・ファンドの基盤を作った盟友ジム・ロジャースは10年間で4200%というリターンを達成した投資家だが、「1日26時間勉強する人間だけが勝てる。投資で勝てる人は100万人に1人しかいない」と話してます。
 自分の金で人生を賭けている投資家は1年中、投資のことばかり考える。こんなプロ相手に簡単に勝たせてくれるはずがない。しかし、投資の勉強をしなければならない。それがいまの日本人の課題でもあり、ジレンマですな。

 この本を紹介した昨年11月末段階では、NYダウも日経平均株価もめちゃくちゃ好調でした。とくに03年4月28日に7607円という底値から考えれば、日経平均株価は倍以上だもの。
 NYダウにしたって、日本のあり余る円の間おかげでいたって好調。ガンガン上がってました。

 こんなNYダウがいったいいつ暴落するの?
 
 FRBが金利を下げた瞬間、暴落は本決まりになる。テクニカルなデータではいつ暴落してもおかしくない。なにかが引き金を引く。それが金利を下げた時だろう、という予測です。今回の暴落は、中国のバブル崩壊、上海の不動産マーケット暴落が引き金を引いたのかもしれません。
 NYダウはなにかが引き金を引くほどパンパンに膨らんでいたんです。
 
 ただ、これはまだ序章に過ぎないと思います。本当の暴落は、松藤さんが指摘するように、バーナンキが金利を下げざるを得なくなった瞬間でしょう。
 日経はじめ、大手新聞の記事は、「バーナンキは金利を上げたがっているが上げられない」「NYダウはソフトランディングする」と一貫して書いてきました。
 果たして、この論調がどう変わるか? しばし注目です!

 この本は、後付け理論が得意なエコノミストや経済評論家、金融ジャーナリストでは書けない情報(理論、情報分析)が満載されてます。日米はもとより、英国、南アフリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド等々に出かけては地下2キロの金鉱山にもぐり、自分の金で世界に投資してきた人間でなければ書けませんな。

 投資のプロ中のプロはどういう視点で経済を分析しているのか。どんな指標で売り、買いを判断するのか。本書は「GSR」「ブリッシュコンセンサス」「ビッグピクチャー」等々、プロの予測法を指南する「ダヴィンチ・コード」かもしれません。久々の実力派の1冊だと思います。350円高。