2010年11月30日「国家の命運」 藪中三十二著 新潮社 714円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 今回は25分間たっぷり話してしまいました。覚悟して聴いてください。忙しい方は、テキストで読んだほうがいいでしょうな。

 戦後、日本から消えたモノは「軍事力」、そして「外交力」ですな。
 戦前はこうではありませんでした。世界を相手に「孤立」を恐れなかった。国連脱退すら厭わなかったわけでしてね。

 この2つが消えてなくなり、代わりにチャージされたのは「経済力」ですね。
 しばらくは、この経済力が軍事力・外交力を凌駕するほどの活躍をしてくれたわけですね。いま、経済力が必ずしもパワフルとはいえないことを見ると、総合的国力の底上げをはからないといけないかもしれませんな。

 そして、かつて失ったこの2つの力のうち、明確に落ちている「外交力」を早急に回復させる必要があるでしょうな(軍事力はあるんです。法的整備と政治家の覚悟、国民の理解。それが求められているんです)。

 NOと言える日本、NOと言えない日本。たいしてちがいはありません。なぜなら、相手の要求を待ってこたえる姿勢は同じこと。オフェンスとロジックで提案する力がなければ話にならんわけですわ。
 
 さてさて、本書を読んで少し安心しました。

 著者は元外務事務次官ですな。こういうポジションの人が、しかも、この方、退官されたばかりでしょ。
 普通はつまんない本になるんよ。「次」がありますからね。で、「骨の髄から官僚」という人は、死ぬまで本音を言わず、深謀遠慮するわけでね。「つまんない」の10乗くらいの本になるわけです。

 けど、この人。かなり本音で書いてるなあと思いますよ。しかも誠実に書かれてることがわかります。希有ですな、このこと自体にまず感心しましたね。

 しかもそこそこ洗いざらい書いてるようですけど、この本、外務省にとってもよかった、と思いますね。というのは、私、戦後、外務省の「官僚力」は鹿鳴館時代に戻っちゃったと思ってましたから、ああ、仕事してる人もいるんだ、と認識を新たにしましたよ。

 さて、ひょんなことから外務省に入ったんですな。友人から誘われて試しに受験。よくあります。それも上級職でなく専門職。期せずして合格。入省すると、上司から、上級職を受けろ、とアドバイス。遠慮したら、定時に帰って勉強しなさい、だと。

 これまた、どういうわけか、合格。ま、優秀なんでしょうな。それから、いろんな交渉(ホントに交渉)を担当することになります。

 たとえば・・・続きはこちらからどうぞ。