2016年12月28日「海賊とよばれた男」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 「國岡のもんよぉ。油持ってきたでぇ」

 原作を読んでると物足りないかもしれないけど、いい映画ですよ。悪役はメジャーだけ。ま、しょうがない。事実ですから。

 クライマックスは「日章丸事件」ですわな。

 う〜ん、綾瀬はるかさん、出演させる必要あったんかいな。嬉しいっすよ。大ファンですから(笛吹雅子さんが不動の1位。浅丘ルリ子さん2位、芦川いずみさん3位なの)。ほんの少ししか出とらんのよ。

 男の映画なんやろね。

 モデルはご存じの通り、出光佐三。いま昭シェルと合併だなんだかんだと話題の会社ですけどね。
 文化があまりにも違いますよね。かたや外資。かたや完璧民族主義。大家族主義。資産がきちんと残るよう節税対策等々も完璧にしてる会社ですからね。水と油。それが合併? ムリ筋なんじゃないの。

 映画の内容と重なって見えますわな。



 日本は先の大戦で、アメリカから原油輸入を止められました。死ぬか戦争か。あのマッカーサーですら、「太平洋戦争は日本にとって自衛のための戦争だった」と議会の上下合同委員会で証言してます。
 ルーズベルトはどうしても日本と戦争したかった。チャーチルから頼まれてナチス・ドイツと戦うために真珠湾を襲わせて、当時、戦争介入に大反対の世論(不戦法もありました)を「リベンジ一色」に誘導しようとしたわけではありません。

 ドイツとの戦争などどうでもいい。とにかく日本と戦争したかった。そのためにも、日本に真珠湾を攻撃させたかった。参謀総長ジョージ・マーシャルは暗号を解読していたにもかかわらず、太平洋司令長官にはひと言も伝えず、2000人もの若者をみすみす死なせることになった。
 それほどまでして、日本と戦争したかった。しなければならなかった。

 なぜか? 詳細は原原でね。

 安倍さんもそんなことは先刻承知。日本のメディアも先刻承知。知っているけど意識的に誤報を垂れ流し続けた朝日とはちがって、単純馬鹿のアメリカ相手に「説得」しようなんてしない。近々、気づきます。そういうグラスルーツの研究をさりげなく支えていくこと。これが日本には大切です。

 教科書問題なんて国内ではどうでもいいの。遅れてきた青年は消えますから教育の現場も変わるし、そもそも現代史は授業で間に合わないからみな知らないし。社会人になってから勉強するから大丈夫。

 世界中でいまでも戦争してるの、アメリカと中国、ロシアだけじゃない? これって、日本が戦争してた国でしょ? 戦争好きの国にいいかがりつけられたんじゃない、と大衆は感覚でつかんでるよね。イデオロギー馬鹿より庶民感覚のほうがはるかに大切。

 国内より海外での普及宣伝のほうが重要かつ喫緊のテーマでしょ。

 油の一滴は血の一滴。戦争を対戦した日本人はみな痛いほど知ってます。
 戦後、日本はGHQにより原油等の輸入は封鎖されてました。狙いは、日本を復活させないため。ところがスターリンが北朝鮮そして中国を押さえ、アメリカにガチンコ対立しはじめたのが誤算。共産ソ連はユダヤ人がつくった体制ですからね。まさかグルジア人によって粛清の嵐となるとは想定外だったでしょ。

 日本が晴れて独立した後、アメリカはメジャーを使って日本の石油会社をM&Aで傘下におきます。民族派石油資本は出光だけ。で、メジャー傘下の元売りは出光に禁輸措置。

 追い込まれた出光が目をつけたのがイランなのよね。けど、イランは英国の植民地。唯一の資産原油は長年に渡って英国に搾取され続けてきました。

 英国ってのは、人のふんどしで相撲をとるしか能のない国でしてね。悪知恵だけは長けてます。凋落の一途をたどってきましたけど、タックスヘイブン利権をアメリカにとられたらもう終わりでしょ。

 バカにしてたイランに、1951年、石油国有化を宣言されちゃうわけ。モサデク政権ですよ。で、出光はこの政権と話を進めて契約にこぎ着けるわけ。
 もち、英国は軍艦を派遣します。イラン原油を載せたタンカーは撃沈すんだかんね、と国際社会に宣言。こそ泥が強盗に変身したわけ。

 「アバダン危機」ですね。

 海賊は偉かったねえ。泥棒は英国のほうやんけ。で、悪知恵には悪知恵で対抗します。英国とトラブりたくない日本政府を慮って国際法の抜け道をとことん考えます。で、極秘で日章丸を派遣しようと決めた。

 海賊が偉いのは、国際情勢を読み切ったこと。原油は相場商品ですから「読み」がいちばん重要なの。大博打だけど、でたらめではなく、「読み」ですよ。インテリジェンスですよ。通勤快読、ぴよこちゃん倶楽部。そして原原ですよ。



 基本の方程式はこんなもんでしょ。英国から解放されたイラン原油を実はアメリカ(メジャー)が狙っている。戦闘行為に出たりすれば、アメリカは証拠を突きつけ国連と国際世論を動かして英国を攻撃するに違いない。アメリカが見張ってる範囲では手が出せない。ならば日章丸がアバダンで原油を積んでも攻撃できない・・・はずだ。



 マラッカ海峡を大きく迂回します。けど、英国のフリゲート艦に発見されて停船命令を受けるわけ・・・。
 「日本もイランも独立国家である。英国が二国間の自由貿易に介入するならば、その証拠を国際世論に提出する用意がある」
 結局、フリゲート艦は停船を諦めます。そして原油を満タンに積んだ日章丸が川崎港に到着するわけ。

 当時、アバダンに到着した段階から、連日、一面で報道されましたからね。注目度バツグン。喝采でしょう。
 英国の権威を地に落としたいアメリカが裏で支援してたはず。ま、英国がどんなに邪魔しようと船長も乗組員も海軍OBですから、武器はなくても、国際海洋法などの知識でも英国海軍に負けるはずがありません。

 残念ながら、直後にモサデク政権はCIAが立てた傀儡パーレビによって反革命で倒れます。最後の最後はカネへの執着の強いヤツが勝つわけ。

 そもそもモサデク政権に英国を追い出させたのも演出はCIAだったのでは?

 イランを巡ってはいろいろありましてね。日本の政治家はアメリカに秘密を握られているからか、公然と反対することはないっすねえ。

 2012年1月、イラン原油の輸入削減をアメリカから強いられます。
 フセインにイラン攻撃を唆したのはアメリカですよ。1980年。当時、日本はイランと進めてきた油田開発を中止せざるをえなかったんです。
 99年に発見されたイラン南西部のアザデガン油田の開発も日本が手がけてきました。推定埋蔵量260億バレル(世界最大規模)という良質油田です。これまでの投資は総額20億ドル。ところが、日本はイランと緊密になるな。アザデガン油田開発に協力するな、と強烈にねじ込まれるわけ。

 アザデガン油田放棄は絶対にありえない。しかしアメリカの圧力は執拗で、結局、この貴重な権益を放棄します。

 日本に圧力をかければ、漁夫の利を得るのは中国。同盟国日本を弱めてどうするつもり? いえいえ、アメリカは日本を仮想敵国といまなお考えています。いつか復讐されると確信してるのよ。

 ネオコンのチェイニー副大統領(当時)自身が先頭に立って、開発権獲得に動いた日本人、首相や大臣だけでなく現場の人間まで直接、手を下して排斥します。この男、人相悪いですよーー。

 「イランがホルムズ海峡を封鎖する」つうニュースが流れましたけど、んなこたできるわけがありません。バーレーンの第5艦隊にはリンカーンとカール・ビンソンが配置されてますからね。制海権もないしぃ、封鎖には機雷を設置したり船を何隻も沈めなければならないしぃ。イランにできるわけないっしょ。

 アメリカがペルシャ湾を封鎖したらイランに原油が入らなくなります。原油がなければ戦争はできません。
 「イランは世界有数の産油国でしょ?」
 あのね、産油国だからってガソリンが豊富にあるわけじゃないのよ。原油は精製しなければ使えないの。
 イランに製油所があるでしょ? ありますよ、稼働してないのばっか。正常に稼働してるのは1つだけ。1979年のホメイニ革命以来、アメリカには経済制裁されて(トランプが復活させそう)機械を動かす部品がないの。

 100年に1度のビッグプロジェクト。日本政府はのらりくらりとかわしてイランと契約調印にこぎ着けます。するとアメリカは別働隊IAEA(国際原子力機関)を使って警告を発っします。これでプロジェクトは露と消えます。

 国際連合、世界銀行、ユネスコなど、国際○○つう名称の組織がたくさんありますけど、日本人くらいですよ、実態を知らずに素晴らしい、と勘違いしてるのは。これ、別働隊なのよ。魑魅魍魎のエゴイストが跋扈してる伏魔殿ですから。

 かつて、メジャー経由で輸入するインドネシア原油を、メジャーを中抜きして直接買い付けたのが田中角栄でした。それまで日本にはカルテックス(アメリカ)経由の日本石油ルートと、ファー・イースト・オイル・トレーディング(岸信介がつくった)というルートしかなかったんです。新ルートを開発したのが角栄さん。
 もちろん、アメリカは猛烈に反発。ユダヤ人キッシンジャー(当初は国家安全保障問題担当大統領補佐官、のちに国務長官)が白い顔を鬼のように真っ赤にして、「ジャップめ!」と罵倒しましたよね。

 角栄さんは資源外交を始める前にキッシンジャーと直接交渉してるんです。
 「いざとなったら、アメリカは日本に原油を用意してくれるか?」
 「できない」
 アメリカってこういう国なの。

 「石油を支配できればその国を支配できる。だが、食糧を支配できればその国民を支配できる」と述べたのもユダヤ人キッシンジャー。

 日本には資源がありません。だから戦争に訴えるしかなかった。

 エネルギー自給率はドイツ27%、イギリス78%、アメリカ61%(シェール革命で90%まで改善してるはず)。自給率には数字のマジックがあります。輸入が0なら自給率は100%でしょ。自前でカバーできるんですから。カナダは人口が少なくて資源がたくさんあるから自給率140%。

 日本は4%。どう考えても少ない。しかし嘆く必要はありません。だって、日本のエネルギー変換効率はアメリカの3倍、中国の8倍。ダントツの世界一。日本はダントツの省エネ国家ですから。

 日本が省エネ社会になれたのは資源がないからです。
 70年代、ガソリンばか喰いの車ばかり作っていたアメリカは日本車排斥のためにマスキー法を可決します。世界一厳しい基準で達成不可能といわれたレベルでした。ビッグスリーは猛反発して、結局、実施前に廃案(1974年)されたんです。

 ところがホンダのCVCCを皮切りにトヨタ、日産がクリア。マスキー法など関係なく、業界が自主的に厳しい排ガスハードルを課したわけ。
 アメリカ企業は政府や政治家に泣きつきますが、日本企業は違うの。わざわざ開発コストをかけてまでハードルを超えようと努力しちゃう。だって、そうしないと日本は原油に振り回されてしまうもの。

 日本が中東産油国のようにリッター10円社会だったら、「タダなんだからガソリンがぶ飲み車でいいよ」となるに決まってます。シェール革命後、アメリカではピックアップトラックがバカ売れですよ。

 しかし、日本はハイブリッド車や電気自動車あるいは軽自動車
開発する。燃費ほさらに改善しようとする。それが日本人。

 いずれ原発も全面停止します。蓄電技術がないから太陽エネルギー等々は安定せずコスト高だけど、このエネルギーで水を水素に変換する技術がすでに実用化されてます。

 こんなこと研究するのも資源がないから。資源がないから知恵でカバーする。資源があるとアメリカに狙われてしまう。

 結論。日本は資源がないから成長できるんです。

 それにしても、安倍さん訪米(ハワイ)のいま、『海賊』に『世界の片隅』を見て欲しいね。『聖の青春』もよろしく。。。


 さて、今日の「通勤快読」でご紹介する本は「役者人生、泣き笑い 後編」(西田敏行著・1,728円・河出書房新社)です。