2018年05月04日「はなれ瞽女おりん」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 忘れないうちに・・・突然、私、FBはじめましたので、よろしくです。


 ここ数日、岩下志麻さんがテレビによく出てましたね。番宣でもなさそうですし、舞台の宣伝でもなさそうですし、「たまたま」なんでしょうか。

 ご本人がやりたいのは『サンセット通り』でグロリア・スワンソンが演じた狂気の女優役だそうです。これ、ご本人から聴きました。といっても、トークショーで語ってたんすけどね。


ビリー・ワイルダーの名作中の名作。

 舞台はロス郊外の豪邸。ハリウッド。サイレント映画。栄光と没落。時代に忘れられた往年の大女優。自分は喝采が忘れられない。いまの自分を受け容れられない。光と陰。悲劇と喜劇。

 てことは、売れない脚本家役をご主人の篠田正浩監督がやったりして。
 んなこたないか。参考までにこの人、学生時代は箱根駅伝の選手で2区を走ってたはず。『瀬戸内少年野球団』がサイコーでしたね。そういえば、志麻さんも旅役者に捨てられる床屋の女主人役やってましたな。天性のコメディエンヌだと私ゃ思ってるんですけどね。



 で、『はなれ瞽女おりん』ですけど、瞽女というのは盲目の少女が将来、メシを食うのに困らないよう、三味線だとか唄だとかを身につけて、酒席等で客を楽しませるエンタテナー・・・といえば言えますが、昔のことですから(なんたって、時代はロシア革命によるシベリア出兵というんですから1917年から始まるわけ)、売春めいたこともあったはず。

 そういうことがあるから寝る時には両足を縛る。自慰行為を防ぐというより酔客を拒否するためだ、と思うね。

 で、母を失った6歳のおりんは瞽女の親方を頼るわけです。

 舞台は、おりんの生まれ故郷=福井の小浜。そして旅は上越の高田へと続きます。白鳥師匠の生まれ故郷ですな。ラスト、おりんは故郷に帰ってきますがね。ま、ラストシーンは声も出ませんな。水上勉らしいといえばらしいですけど。

 「はなれ」つう意味は破門された、つうこと。どうして破門されたか? 客をとってしまったからですよ。女なんですよ、女。業が深いつうか好き者つうか。寂しがり屋で冷え性で、「おらの身体、ぬくめてけろ」と男にしがみついて離れない。ジジイ相手でもですよ。



 志麻さん。盲目の役ですからずっと目をつぶっている。長いロケで全国あちこち旅しています。しまいには、目を閉じていてもだれが通ったかわかるようになった、と言ってますね。

 盲学校にも通ったらしいです。「廊下を歩いてください」と先生から言われると、どうしても左に偏ってしまう。これって右より左側の耳がいいからだそうです。人間てのはそう動いてしまうらしいっすね。

 たぶん、目が見える人でも人の話を聴く時、自然と利き耳のほうを向けているはずですよ。

 肉体関係を持たない唯一の男とおりんは旅を続けます。この男役が原田芳雄さん。撮影の時は、志麻さんと顔を合わせないようにしてたらしい。目の見えないおりん相手に、自分の姿は見えないようにしてたわけ。志麻さん、ずっと嫌われてると思い込んでたらしいっす。

 なんといっても、志麻さんの美しさ。そして日本海の美しさ、風景の美しさ。風景のみならず心象風景にも四季折々の美が映ります。当たり前ですよ、カメラは宮川一夫さんだもんね。『瀬戸内・・・』もそうでしたな。