2018年07月24日金価格下落の犯人はこいつらだ!

カテゴリー中島孝志のとってもいい加減な市場観測日記」

 いつものように、連載してる有料サイトの原稿を1日遅れでアップします。ほら、あちらは莫大な原稿料じゃないっすか。1日遅れでも役立つと思うよ。


 ここ数日、金価格は「二番底」の様相を呈していましたが、ここに来て、ようやく反発。



 米朝首脳会談の破談から開催へ、続いて米中貿易摩擦、米中関税合戦へと続く中、「まさかの金」がまったく「ふつうの金」でしてね。「7月3日から反発する」とブログに書いた日に1241ドルまで下落しちゃうし。

 どないなってまんねん?

 さすがにこれは行き過ぎたのか、その後、反発したモノの、1230ドルを切る始末。先物では安値で1220ドル切りまで下落しています。

 原因はなにか? 以前から言っているように「中国による虎の子の金売り」です。それと・・・。



 少し脱線しますけど、ロシアは中国に先駆けて「虎の子の米国債」を売って、中国の代わりに「金買い」を加速してきました。
 大量の米国債を売ってるんですから米国債の価格は下がる一方、アメリカの長期金利は上がるし、金価格も大幅上昇・・・のはずなんだけど・・・。


ロシアの金買い。米中それぞれの思惑で金売り。皮肉なもんですな。


 現実はどうかつうと、長期金利は上昇したことはしたけど、視力検査並の数値で市場に与える影響はありません。米国債の価格も暴落はしてないし、金価格なんて逆に下落の一途。あんだけロシアがかいまくっているのにです。

 なんで? 経済の理屈で考えれば・・・。

 「米国債価格暴落=長期金利急騰=世界株価同時暴落=金価格急騰=ドル暴落」

 この悪の連鎖に火がついてしまいます。

 これは困る。で、トランプ政権は手下のGSはじめ米国金融機関(投資銀行)に号令して「金ETF」を売りまくらせたわけ。

 白鳥も水面下では必死に水かき動かしてるわけね。

 これからも「トランプVS習近平」という構図は続きますが、米中だけで考えてると大局観を見失います。やはり、「トランプVSユダヤ金融資本+軍産複合体」という大きなフレームワークを常に意識しておかないといけません。

 やっぱ、ロシアの米国債売りより市場とくに為替市場を揺さぶってるのは「米中関税合戦」なのよ。

 中国の米国産品輸入1300億ドル、アメリカの中国産品のそれは5050億ドル。輸入産品に関税をかけるとなりますと、衆寡敵せず。話になりません。もちろん、中国の惨敗と考えるのがふつうだし、いつものように常識屋のメディアはそう書いてます。

 しかし、中国もしたたかでね。これだけのハンデを跳ね返そうと知恵を絞りました。結果、出てきたのが「為替操作」です。





 ドルに対して人民元を下げる。この為替トリックで25%の関税をかけられてもそれほどダメージを受けないで済みます。

 この奇手にトランプはどう出るか?



 関税枠は5050億ドルまであるのですから、このボリュームで圧をかけることはできます。もちろん、中国はさらに人民元安へと出るかもしれません。
 トランプは予想通り、「中国は為替操作をしている!」と財務長官に非難させました。
 たしかに為替操作をしています。いままでもしてきました。しかし為替介入しなければ、関税合戦で太刀打ちするのは難しいわな。

 中国が人民元安で対抗するなら、トランプはドル安で対抗するんでないかい。

 ここがポイント。

 中国の人民元安は、北米市場で猛烈な金売り・ドル買いを通じて為替操作してきました。「金価格」を通じて安くしているわけね。「金売り→ドル指数上昇・ドル高」つう流れ。

 これに対して、トランプは真逆の戦略、すなわち、「金買い→金価格上昇→ドル指数下落・ドル安」とするはずです。



 「FRBはこれ以上利上げするな!」
 「FRBは金利をますます上げたくなるようだが、われわれは経済に生きている!」
 「ドル高はアメリカ輸出業の貿易力を毀損する」

 不動産屋のトランプは根っから「ドル安志向」です。で、トランプ発言に市場は瞬時に反応しました。1ドル113円まで円安(ドル高)が進んでた為替は一気に111円前半へと円高(ドルにすれば下落)となりました。

 もちろん、トランプ発言で円高ドル安となりましたが、長期金利はといえば、2.85%から2.89%へと上昇したけど、短期金利と金利先物は動いてない。

 つまり、FRBは独自判断で利上げを進めていく。トランプは金利政策に介入できない、と市場は認識してるわけ。

 中長期的にはアメリカは金融立国、知的財産権立国、投資立国として生きるべきで、結果、「第一次所得収支」を大幅に育成すべきですから、「ドル高」がベターなのよ。

 トランプはバカではありませんから、そんなことは百も承知でしょう。中間選挙と2年後の大統領再選キャンペーンの頃には、票田のラストベルトの有権者たちに気兼ねすることなく、「ドル高」へと大きく舵をきると思う。
 バブル景気で賑わっているでしょうから、必然的にドル高になってるかもしれません。

 一方、習近平にしても「米中関税合戦」を奇禍として、忌々しい債務超過の国有企業を粛正に向かうはずです。
 とっくに破綻しているゾンビ企業をこれ以上延命させていたら中国そのものが崩壊してしまいます。「いまがラストチャンス!」と踏んでいるはずです。

 中国のGDPは13兆ドル、法人の負債は20兆ドル(アメリカのGDPと同じ)、個人のそれは5兆ドル(日本のGDPと同じ)。法人負債で国有企業(51000社・従業員2000万人)のそれは6割もあるのです。すでに2100社の倒産が伝えられています。
 地方政府が採算度外視で私腹を肥やした結果、積み上がった負の遺産です。もちろん、返済できるはずがありません。債務の株式化と売却、そしてお得意の粉飾決算で生き延びてきましたが、習近平は荒療治に出るはずです。

 金価格のV字回復はトランプの次の一手。中国に向けて「ドル安転換」を宣言した瞬間に始まると思うな。

 さてさて、結論ですけど、金価格下落の犯人は・・・米中なのよ。「金価格を下げる」という目的だけは一致してる。とばっちりを受けてるのは金投資家です。ま、トランプの動きを見れば金のV字回復も近いと思うけどね。 


 さて、今日の「通勤快読」でご紹介する本は「馬渕睦夫が読み解く 2019年世界の真実  いま世界の秩序が大変動する 後編」(馬渕睦夫著・994円・WAC)です。