2018年08月21日インバウンド銘柄の株価について。。。

カテゴリー中島孝志のとってもいい加減な市場観測日記」

 いつものように、連載してる有料サイトの原稿を1日遅れでアップします。ほら、あちらは莫大な原稿料じゃないっすか。1日遅れでも役立つと思うよ。


 総裁選を前に、「安倍首相訪中、10月23日軸に調整=友好条約発効40年に合わせ」という報道が流れています。仮想敵国・中国からのオファーですが、いかに天敵といえども無碍にすることはありません。

 安倍首相はトランプの性格を呑み込んでいるので、アメリカ大統領が嫉妬しない程度に習近平と仲良くするはずです。習近平のほうは、トランプが嫉妬するほど、安倍首相を手厚くもてなすことでしょう。
 アメリカと中国との距離関係を間違えなければ(間違えないと思います)、日本の国益にも大いにプラスになるはずです。

 どうして、中国が安倍首相を招待するのか? いろんな事情がありますが、ポイントは3つ。

1安倍首相3選が現実的になってきたこと。
2中国経済の低空飛行。
3米中貿易摩擦=トランプとの仲を取り持って欲しい。
 
 トランプが仕掛けた「米中貿易摩擦」は、中国にとって1989年6月4日の「天安門事件」に等しい大事件です。犠牲者について、中国は恐ろしく低めに発表(319人)していますが、あのとき、人民解放軍が殺した学生・市民の数は少なく見積もっても1万人というのが相場です。

 世界中が中国を非難しました。中国は世界で孤立しました。いまでも、アメリカでは議会も市民も「天安門事件」について糾弾し、弾圧政策はいま現在も続けられている、と批判していますが、当時、各国は経済援助はもちろん、貿易や投資、技術供与も停止削減する制裁を中国に行ったのです。

 このとき、手をさしのべたのが日本です。停止していた対中経済援助(ODA)を再開させ、中国からは感謝されたでしょうが、欧米からは非難されました。

 中国という国は政治で動きます。経済も政治で動きます。経済で政治が動くわけではありません。それだけ権力闘争が激しいことを意味しています。
 その後、中国の経済力が大きくなると軍事力も飛躍的に伸び、結果として、世界における政治力も大きくなりました。いまや、アメリカの上下院、州知事のみならず、地方首長においても、イスラエルを超える「ロビイ活動」を展開しています。

 AIIBを発表したとき、アメリカの制止を振り切って、韓国はもちろん、イギリス、フランス、イタリア、オーストラリア、あのスイスまでが参加したのです。これから脱退が相次ぐかもしれませんが、逆に、日本はAIIBに参加すべきです。

 いつ参加を発表すればいいか? 米中貿易摩擦が緩和された時です。
 では、いつ緩和されるのか? まだまだ緩和されないどころか、中間選挙で共和党が勝てば(勝つと思います)、さらに「えげつなく」なります。つまり、米中貿易摩擦はいまどころではない、ということです。

 さて、金価格は1200ドルを切りました。ボリンジャーでチェックすると今後もドル指数が好調のようなので金価格はさらに下がると思います。金価格についてはいまやペグっている人民元を見れば一目瞭然です。人民元はまだまだ下がるでしょう。ドル建て金地金を底値で拾う、押し目買いのチャンスだと私は考えています。



 ところで、NK225は相変わらずの乱高下(ダウ平均株価より酷いです)。マザーズは6月末終値1090Pから下落。8月15日には年初来最安値932P。昨年末終値が1231Pでしたから24%の下落です。
 ファンダメンタルズが好業績。せっかく空前の売上と利益を発表しても、株価は冴えない展開です。もちろん、「底値で拾う」「10%上がれば売る」がモットーの私は、割安株が山ほどあるので、少ない資金の投資先に嬉しい悲鳴をあげています。





 さてさて、メディアも経済誌も「米中貿易摩擦の激化でインバウンド銘柄は暴落」と報道したかと思えば、「8月末から米中協議が始まるのでインバウンド銘柄はV字回復」と一転。いったいどちらを信じればいいのか?

 自分の読みを信じるしかありません!



 そもそも、米中貿易摩擦とはなにか?
 トランプにとっては、中間選挙に勝つための「道具」にすぎません。「牧師を返せ返さない」とトルコと対立するのも「道具」ですし、トルコリラを暴落させて新興国マネーをアメリカに環流させているのも「道具」です。もちろん、北朝鮮とイランの締め付けも「道具」です。

 習近平にとっては、赤字を垂れ流す国営企業、国有企業を淘汰するための「道具」。
 米中貿易摩擦に振り回されるのがバカらしく思えてきませんか? 戦っているようで、実は、あうんの呼吸でどちらもメリットを狙っています。ある意味、これ、米中の芝居ではないか、と勘ぐっておいたほうが賢明でしょう。

 そもそも、トランプの怒りは矛先が違うのです。というのも、17年の経常収支で黒字幅最大国はドイツ(△2964億ドル=GDP比△8%)です。2位は日本(△1961億ドル=GDP比△4%)。そして3位が中国(△1649億ドル=GDP比△1.4%)なんです。
 赤字幅最大国はもちろんアメリカ(▼4662億ドル=GDP比▼2.4%)、2位イギリス(▼1067億ドル=GDP比▼4.1%)、3位カナダ(▼488億ドル=GDP比▼2.6%)。

 貿易摩擦でトランプが怒るべきはドイツと日本で、「どうしてオレが?」と習近平は感じているでしょう。トランプは中国を叩きたい。貿易摩擦は「道具」にすぎません。

 転換点が判明するのは11月6日。中間選挙のキャンペーンはすでに終わっていますから、10月には米中貿易摩擦の行方はどうなるか、兆候が見えてくるのではないか、と考えています。

 大きなトレンドとしては、ドル機軸体制は終焉を迎えます。これだけ各国の通貨を毀損させ、ドル一人勝ちとなれば、各国ともドルから避難しようと考える、に決まっています。いちばん最初に避難するのはもちろんユーロでしょう。

 EUだけでなく、新興国はそれぞれ自国通貨を使って貿易を始めようとするでしょう。ジンバブエですらそうするかもしれません。ジンバブエ・ドルほど信用がなくとも、ドルではない通貨、たとえば、ユーロや円、人民元を使おうとなるでしょう。
 つまり、たんなるドル安転換ではなく、本格的な「ドル離れ」が始まります。トランプはドル基軸通貨体制の「最後のアメリカ大統領」となるかもしれません。

 個別銘柄に目を転じると、10月23日、総裁選に勝った安倍首相(ネオコン協力者小泉純一郎元首相のジュニアが大波乱を起こすかもしれませんけど)の訪中で、「インバウンド銘柄」でも、これは火がつくのでないかい、と考えてるものがあります。



 これから先は今週末の「中島孝志の銘柄研究会」でお話します。ほら、ここですべて披露しちゃなうとメンバーに悪いじゃないすっか。


 さて、今日の「通勤快読」でご紹介する本は「わけあって絶滅しました。世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑」(丸山貴史著・1,080円・ダイヤモンド社)です。