2018年09月11日金価格はどうなるのか?

カテゴリー中島孝志のとってもいい加減な市場観測日記」

 関西の空前のメガ台風と、引き続いて発生した北海道大地震による、被災者の皆様には衷心より哀悼の意を表します。
 台風列島日本、地震列島日本は、昨日今日できたわけではありません。縄文、弥生、古墳時代から続く「地政学的リスク」です。それを承知でこの国に住んでいるわけですが、それにしても、今年の天変地異は尋常でありません。

 天変地異のある年はなぜか政治経済にも大きなイベントリスクが発生する「不吉な当たり年」でもあります。気を引き締めて臨みたいと思います。

 いつのように1日遅れで「有料投資サイト」に連載してる原稿をお届けします。


 さて、イタリアの政情が落ち着いてきたと思ったら、米中貿易摩擦が燃えさかり、とばっちりは財政不安を常に抱える「借金国」を襲いました。また、今月からUSTRと日米貿易交渉が始まります。

 「通商合意なければ大きな問題になることを、日本はわかっている」

 まさに恫喝に等しいトランプのひと言を反映して、日経平均株価一時300円安。その後持ち直したものの連続下落という有様です。

 企業業績は改善しているのに株価が付いてこない。つまり、「割安株」のオンパレードということです。

 株価を決定するのは、まず「企業業績」、それに「ダウ平均株価」「上海総合指数」「為替」と言われますが、ここしばらくは「トランプ発言」がモノを言うようになりました。そのうち、「オオカミ少年」と見なされてだれも相手にしなくなればいいのですが、中間選挙を前に、「共和党勝利=トランプ再選」のためにはなりふりかまわない行動に出るはずですから、まだトランプショックが続くはずです。

 トランプのグランドデザインについては前回少しお話しましたし、次回、詳しく述べたいと思いますが、今日は株価と金価格、それぞれの動向についてひと言お話しておきたいと思います。

 ダウ平均株価と日経平均株価の先週の最終株価はチャートの通りです。





 日経平均株価については下落基調ですが、まったくモノともせずに上昇している銘柄も少なくありません。また、これだけ割安株がありますと、底値で拾う投資家も少なくないと思います。私自身、こういう下落局面こそ最大のチャンスと心得ていますので、内心、「待ってました!」と声をかけそうなくらいです。インデックス投資ではなく銘柄投資を趣味にしているので、比較的、リスクが少ないのかもしれません。

 さて、金価格も1200ドルを超えてきたと思えば、1180ドル台に下落するなど、日経平均株価が22000〜22500円のボックス相場になっているのと同様、1200ドルが1つの基準点になっているかのように見えます。



 ロシアが米国債を売却して、思いっきり金へとシフトしている中、これだけ金価格が下落し、上値が重いのは、もちろん、売り勢力が強いからです。すでにお話してきたように、貿易、関税、為替で対立している米中がこと金価格については上がっては困る、という勢力で、北米地域で盛んに売っているわけです。

 それだけではありません。イタリアの政情不安による金融危機を皮切りに、中国の貿易と経済縮小懸念、そしてFRBの利上げ、好調が続くアメリカ経済、好調な株式市場を反映して、ドル一人勝ち。すなわち、新興国への投資がアメリカに環流し、同時に新興国通貨が売られ、ドルが買われる結果、相対的にドルが強くなっています。

 外国人投資家が日本市場から離れれば、当然、株安=円高になります。

 金価格の下げは、ロシアが1人で買っている反面、トルコとベネズエラという海外(米中)からの投資に大きく依存する体質の国家が自国通貨防衛のために虎の子の外貨準備(金)を売却している結果、なかなか金価格が上昇しない、というカラクリになっています。









 今後、ドル指数は微減基調ですし、利上げストップ=ドル安転換したい、とトランプはあちこちでこぼしていますが、自民党総裁選までは円安ドル高、以降、中間選挙からはドル安円高へとシフトチェンジになるとお話してきましたが、ドル円為替差はそれほど広がらない、と考えています。





 トランプが世界を相手に喧嘩を売りまくり、為替、株式、債券、商品相場まで大きく揺さぶり、「VIX指数」が急騰しても「まさかの金」の価格はそれほど上昇しないのは、売り勢力が強く、買い勢力が弱いからです。つまり、アメリカ市場にマネーが環流していることを意味しています。



 中間選挙で民主党が優勢になるか、それを打開するために、トランプがなにか仕掛けてくるか、それ次第では金価格の急騰もありうると考えています。

 いまさらどう足掻いてもアメリカの財政赤字が好転するはずがありません。株価は自社株買いのおかげ、債券市場は世界中を脅かして資金を巻き上げたおかげ。世界中のカネを吸い上げてこれからさらにバブルを謳歌するつもりでしょう。しかし、経済危機は世界のあちこちに導火線が垂れ下がっている状態です。

 それを承知でドル基軸体制を自ら破壊にかかってるのですから、敵は日本や中国、ロシアやユーロではなく、既存の利権勢力だということがわかります。やるかやられるか・・・これについては次回お話します。


 さて、今日の「通勤快読」でご紹介する本は「みんなちがって、みんなダメ 前編」(中田考著・2,449円・KKベストセラーズ)です。