2018年11月24日映画『ボヘミアン・ラプソディ』

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 「Fortune Favors the Bold.」つうキラーフレーズがありますな。
 「運の女神はやんちゃがお好き」とでもいいましょうか。生真面目で計算尽くのヤツはダメ。計算を超えたとこに実は勝機てのはあるわけでね。

 たとえば選挙なんざその典型でして。地盤、カンバン、カバンもないし、も少し顔を売ってから立候補しても遅くはないな、てな慎重居士がいましてね、一方、いま出ないでどうすんねん、後先考えず立候補。「バカか、あいつは?」「家族はどうするんやー?」とアホ呼ばわりされまして。

 けど、その選挙。全員当選。定員と立候補者数が同じだったから。

 人生てのはタイミングですな。運ですな。実力でどうのこうのとはなりませんな。だから、おもしろいわけでね。
 
 さて、このフレーズ。元もとは「Fortis Fortune Adiuvat.」つうラテン語でんねん。

 「幸運は勇者の味方をする」

 たしかにねえ。リスクをテイクしたヤツだけが蜜にありつけるわけ。無謀? それは「デンジャラス」なだけで「リスクテイク」とは違います。ただのおバカさんっす。「リスク」ってのは「明日の糧」つうアラビア語ですから。



 QUEENの「オペラ座の夜」つうアルバムは全英チャートで9週間トップを続けた傑作。3カ月でミリオンセラーを打ち立てます。

 「♪ママー、ボクは人を殺したとこなんだ」という歌い出し。それからオペラ風のアレンジからアカペラとか五変化。トータル6分。当時、こんな長尺を放送してくれるラジオ局なんてありませんからね。
 プロデューサーが却下するのは当然。けどQUEENのメンバーは全員「ボヘミアン・ラプソディ」で勝負したい。



 歌詞は奇妙なキーワードのオンパ。これ、人の名前なんすけどね。「ガリレオ」はどなたもご存じ。「スカラムーシュ」は17世紀のた道化師だし、「フィガロ」は「フィガロの結婚」から。「ベルゼブブ」は新約聖書に出てくる悪霊君主。「ビスミラ」はコーランからの引用。
 スカラムーシュはフレディ・マーキュリーの象徴。ガリレオは天文学を先行してたギタリストのブライアン・メイのこと。


マレーネ・デートリッヒの写真が何回か出てきますよね。この陰影がお好みだったみたい。

 1985年7月13日、ボブ・ゲルドフがプロデュースした「ライブ・エイド」(ロンドンのウェンブリー・スタジアムで開催)。エチオピア飢餓救済チャリティ・コンサートなんですけどね。
 ジョン・F・ケネディ・スタジアムほかで同時開催。衛星が13(オリンピックでも3つなのに)、世界150カ国に生中継。15億人が見た、つうコンサート。

 キャストはポール・マッカートニーにボブ・ディラン、エルトン・ジョンなど錚々たるアーティストたち。

 その頃、400万ドルに目が眩んだ「マネジャー=恋人」の口車に乗って独立。で、QUEENのメンバーとフレディは仲違いしちゃうわけ。
 よくいますよね。マネジャーとか秘書とか代理人とかになって、周囲と連絡をとらせなくするヤツ。都合のいい情報しか流さない。結果、裸の王様。QUEENのメンバーは何回もフレディに連絡するんですけど「マネジャー」が取り次がない。もち、コンサートについても知りません。

 ようやく知った時には出演者が決まってた。「出演しなければ永遠に後悔する。頼む、受けてくれ」とメンバーに詫びを入れてなんとか出演。

 映画でもきっちり描かれてるけど、「ボヘミアン・ラプソディ」「レディオ・ガ・ガ」で世界を魅了してしまいます。QUEENがそしてフレディが「レジェンド」となった瞬間ですな。
 
 実は翌年、このウェンブリー・スタジアムで単独ライブ。2日間で15万人もの動員。史上最大にして最高のパフォーマンスとして語り継がれます。
 この後、フレディは病状が悪化して亡くなります。ゾロアスター教に則り火葬されました(彼はペルシャ系インド人でしたからね)。

 享年45歳。そう、27年前の今日のことです。合掌。