2019年03月22日「まく子」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 「サイセー、サイセー、サイセー!」
 祭りのかけ声。どうしてサイセーなのか? 再生だから。祭りのためにつくった御輿も河原で壊して燃やす。再生するために。

 シュンペーターの創造的破壊? 幸之助さんに言わせたら、死もまた生成発展やで、ということになりそうです。大徳寺の立花大亀住持の受け売りでしょうけど、合点がいくからそう発言してるわけでね。

 生き続けるから再生なのではなくて、死があるから再生があるわけ。再誕生。生まれ変わり、蘇りですからね。

 みなが顔見知りの小さな温泉街。映画では群馬の四万温泉にしてますね。



 小学5年の慧(サトシ)は大人になりたくない。大人になると、女好きで母親を哀しませるオヤジみたいになっちゃうから。ただでさえ、「最近よく似てきた」と言われるからよけい気になってるみたい。

 「ボクのキンタマきもい」

 美人転校生コズエは宇宙人だと言う。母親同様、変わっていて、なんでも「まく」。原作では小銭や砂利、ホースの水も「まく」んだけど、映画では「落ち葉をまく」だけ。

 コズエの秘密がサトシの世界を塗り替えます。信じること、与えること、受け入れること、変わっていくこと。誰もに訪れること。怖いことではないよ。



 原作は「通天閣」の西加奈子さん。監督脚本は鶴岡慧子さん。「感涙決壊」というほどではないと思うけど、すっきりとさわやかで美しい。

 草なぎ剛さん。SMAP解散後、初仕事だったようです。「なんでもやんなきちゃ」と必死だったらしい。大スターでも板子一枚下は地獄なんですね。独立するということはそういうことです。

 実は、肉体は瞬間瞬間、細胞が死んでは生まれ変わる、という新陳代謝を続けています。けど、精神も新陳代謝してることを知らない人が少なくありません。

 人は変われる! いつでもね。仮り船の肉体ですら変われるんですから、水主である精神が変われないわけがありませんわな。