2019年05月15日宝塚「アルジェの男」に見る女たち。。。

カテゴリー中島孝志の落語・演劇・タカラヅカ万歳!」

 ある若者が「夢」を抱く。けど、彼の場合は「野望」と言われた。

 スラム出身の孤児だから。

 徒手空拳の身でつかむにはそれなりの戦術があるわけさ。「頭が切れる」という才能も、「美青年」という資質もすべて使い切る。

 振り回される女が3人。

 同じスラムで育った踊子サビーヌ、スリに失敗したのが縁で「拾ってくれた」提督の令嬢エリザベート、そしてパリ社交界を牛耳るマダム唯一の身内、盲目のアナベル。

 「愛している」と囁いて女たちを利用する。ドンファンかカサノバ、それとも・・・ジュリアンの武器はこれしかないんだもん。しかたないじゃないの。

 どの女もジュリアンを深く愛します。命を賭けてね。けど、最後の最後にジュリアンが選んだ女は? だれだと思う?


星組次期トップスター!もはやトップの風格、礼真琴さん。


大好きな音羽みのりさん(ハマ出身なのよ。高校は目黒だけど)と今回ツートップ。次期トップ娘役は舞空瞳さんなんだけど。




11年上演は月組。霧矢大夢さんでしたね。その前だと、初演の鳳蘭さん(74年)とか峰さを理さん(83年)。

 74年初演の名作ですから、演出がどうなるかでぜんぜん違います。

 観客はジュリアンに瞳キラキラで酔いしれる乙女たち(超昔の乙女も含めて)ばかりだと思うけど、同時に3人の恋する女たちにも周波数ドンピシャ。1人1人のヒロインになりきりながらジュリアンに心寄せていたのではないかしらん?

 テーマは・・・「献身」ではないかなあ。「純愛」なんて弱いもんじゃないわな。見返りをまったく求めない愛。捧げてこその愛。

 遊びに遊びまくって遊び疲れた男が、いい年になってかつての美青年ぶりもすっかりはげ落ち、同時に羽振りも零落。だれからも注目されなくなった。
 ふと横を見ると1人の女。
「いつからいたの?」
「ずっと」
 こんなに近くにいたんだ! 『旅路』のポーラ(英国を代表する女優グリア・ガースンが演じたなあ)ですよ。

 「ジュリアンが選んだ女性は?」なんて書いたけど、選ぶ選ばないという次元の話じゃないでしょうね。「運命」だと思うのね。「この人しかいない!」「生まれる前から決まっていた」つうほどの強い絆。

 縁でしょうな。30年前、ある霊能者から言われたひと言が忘れられないね。その話はまたいずれ。