2019年07月13日「ハウス・ジャック・ビルト」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 先日『コールドウォー』をご紹介しましたが、同じ映画館で上映。しかも満席。

 えっ、こんな映画が満席? 観るつもりでしたよ、けど、そこまで混んでるとは。あなたも好きねーつう感じですね。



 さて、本作は長い長い長い映画ですよ。けど飽きない。さすがです。

 「殺人」を哲学と美学に高めた、というと語弊がありますけど、たしかに強姦殺人とか強盗殺人、恨み辛みの殺人(たとえば『復習するは我にあり』とか『八墓村』)といった、衝動的動物的殺人事件ではくて、きわめて観念的人間的殺人事件を描いた作品なんすよね。



 1970年代、ワシントン州。シリアルキラー、テッド・バンディをモデルにしたんかな。イケメンで30人超の若い女を殺害。警官を装ったり身障者を気取ったりもバンディの手口と同じ。

 いつの間にか、殺人をアートとして、完成を目指すようになります。自己の中のもう1人の自分から「ハウスはどうした? 建築家じゃなかったのか?」と言われ究極のハウスを造ります。

 アーキテクトでありアーティスト。

 人は誰でも殺人者なれる! 『ドッグヴィル』『メランコリア』『ニンフォマニアック』そして『ダンサー・イン・ザ・ダーク』で知られるラース・フォン・トリアー監督の弁。



 5年ぶりの制作は、ユダヤ中心の映画業界でヒトラー共感発言をしちゃ干されるのは当たり前。カンヌを追放された男がカンヌに戻ってきた・・・まあ、この映画でもヒトラーは出てきますけどね。
 
 ジャックを演じるのはアカデミー賞『クラッシュ』のマット・ディロン。最初の被害者である高慢女はユマ・サーマン。やっぱ魅力的。『ベルリン・天使の詩』のブルーノ・ガンツは狂言回しとして、彼の哲学を語らせます。

 とんでもない映画を観てしまったわな。R18+指定「無修正完全ノーカット版」。カップルで観る映画でないことはたしか。。。