2007年04月03日「サンダカン八番娼館 望郷」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

♪おどみゃ島原の おどみゃ島原の
 梨の木育ちよ
 何の梨やら 何の梨やら
 色気なしばよ しょうかいな

 はよ寝ろ 泣かんで オロロンバイ
 鬼池ん 久助どんの 連れんこらるばい  


 帰りにゃ寄っちょくれんか 帰りにゃ寄っちょくれんか  
 あばら家 じゃけんど
 唐芋飯(といもめし)や粟ん飯 唐芋飯や粟ん飯
 黄金飯ばよ しょうかいな

 嫁ごん 紅(べん)な誰(だ)がくれた
 唇(つば)つけたなら 暖ったかろ

 山ん家はかん火事げなばい 山ん家はかん火事げなばい
 サンパン船は与論人
 姉しゃんな握ん飯で 姉しゃんな握ん飯で
 船ん底ばよ しょうかいな

 泣く子はガネかむ おろろんばい
 アメガタ買うて ひっぱらしゅう

 姉しゃんな何処行たろかい 姉しゃんな何処行たろかい  
 青煙突のバッタンフール
 唐(から)は何処ん在所(にき) 唐は何処ん在所
 海の涯(はて)ばよ しょうかいな

 はよ寝ろ 泣かんで おろろんばい
 おろろん おろろん おろろんばい

 あん人たちゃ二つも あん人たちゃ二つも
 金の指輪はめとらす
 金はどこん金 金はどこん金
 唐金(からきん)げなばい しょうかいな

 おろろん おろろん おろろんばい 
 おろろん おろろん おろろんばい♪

 「島原の子守歌」って切なくて哀しいねぇ。

 からゆきさん。
 だれだって、わが娘を売るのは辛いもの。けど、喰えなければしかたない。だから、前の晩はせめてご馳走して送りだそうと考える。
 貧しい親にはこんなことしかできませんよ。

 自分で娘を送り出すことなんてできないね。まわりの人にも知られたくないね。だから、山で火事を起こす。
 みなが山に行ってるすきに、天草は鬼池の久助が連れ出していくわけ。この人は女衒だかんね。まわりもみな知ってるわけ。火事があると、あぁ、だれかまた売られていくんだなってさ。お約束なのよ。
 山の火は娘を送るための、ほんものの「送り火」なのね。

 もちろん、青い煙突のバッタンフールに乗らされるわけ。船賃? この娘の処女よ。サンダカンに着くまでにもう女になってるわけ。
で、からゆきさんが流れ着く先はサンダカン。昔のボルネオだね。いまはカリマンタン。マレーシアの州都コタキナバルに次ぐ街で、戦時中は日本が占領してました。


田中絹代さんてつくづく女優なんだな。サキ以上のサキになってた。

からゆきさん? 海外で売春婦として働く人のことね。

 「サンダカン8番娼館」という本があります。8番というくらいだからたくさんあったんだよ。
 日本軍も来ては遊んでった。軍艦なんか留まるともう大変。1人で10人以上相手にしなくちゃなんないからね。

 著者の山崎朋子さんはサンダカンでからゆきさんの墓を探してた。もう見つからないと諦めた時にようやく見っけ。藪の中で見っけた小さな小さな小さな墓。
 墓というより、ただの印。

 さて、映画です。
 女性史の研究をしてる三谷圭子(栗原小巻)は、天草の食堂である老婆(田中絹代)と会います。
 昔、海外で働いてたと聞くや、連れの女性が口を挟む。
 「じゃ、おばあさん、からゆきさん?」
 その一言で顔色を変えて外に出てっちゃう。

 女性史の研究家がからゆきさんに興味を抱かないわけがない。ジュースを買って、彼女の住処を訪れる。
 これがひどいあばら屋でね。こんな汚いとこ、見たことないというくらい汚い。畳にうじが湧いてるくらい。そこら中に虫がいる。よく、こんなとこ探したよ。
サキという老婆はめちゃくちゃ歓待すんだよ。嫁ですら敷居をまたがなかった。実の息子ですら近寄ろうとしなかった。けど、この女性は訊ねてきてくれた。
 少しずつ心を開いて、自分の半生を話し出します。

 サキの若い頃の役を高橋洋子さんが演じてます。巧いんだ、これが。
 私、高橋洋子さんて好きでね、デビュー作の「旅の重さ」から好きだったの。この作品、高校1年の時だと思うけど、原作(素九鬼子)読んでね。映画館で見ました。高橋悦史さんとか出てたな。高橋洋子さんが海で裸になるのが話題になってたね。秋吉久美子さんが本名で出てたな、そういえば。
 劇中歌がいいの。なんたって、拓郎の「旅の宿」だよ。

 売春婦でも恋くらいするよ。身体じゃなくて、心を愛してくれた青年がいたの。でもね、貧しさのどん底にいる男女だから、これから数奇な運命をたどります。日本の数奇な運命をたどります。
 歴史がサキの人生を飲み込んでいくんだけどね・・・小さな女がたどる波瀾万丈の人生。
 女性史研究家も嘘がつけなくなっちゃって、サキに告白すんだ。すると、意外なことを言われるんだよ。
 ♪ちょうど時間となりましたン。あとの話は映画で観てね。それでは、サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。ごきげんよぉ♪