2007年06月04日「世界バブル経済終わりの始まり」 松藤民輔著 講談社 1575円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 ソロモンブラザーズ伝説の証券マンから、金鉱山経営のビジネスマンに転じた松藤さんの本ですね。
 売れてますなぁ。アマゾンでは、漫画や写真集も含めて、いきなりベスト30内でっせ。

 昨年12月に出版した「アメリカ経済終わりの始まり」に続く第2弾になりますな。けど、今回は経済分析、経済予測から「投資法」に舵を大きくとった点が特色といえましょうか。

 これが常識破りの投資ばかり。つうか、日本人が読むからそうなるだけで、世界の投資常識から外れたものではありませんねん。

?金利が上がれば株価は上がる
?分散ではなく集中してこそ投資の旨味を享受できる
?日陰の銘柄注目せよ
?駆け込み乗車禁止!次のバスを待て
?バフェットの投資法賞味期限切れ
?赤信号1人で渡れ
?インチキはどこの世界にもある
?アナリストの予想7〜8割は外れる
・・・
 こんなのが、体験談を通じてドカッとあるわけ。

 この人は日興・メリル・ソロモンと前半はぺーバーマネーの世界(株式投資、債券投資等)で勝ち抜くことに懸命だった。

 ソロモン時代、新しい金融商品はたいてい彼が手がけたもの。1兆円ものデリバティブ(金融派生商品)から、ブラジル、メキシコ等のエマージングボンド(新興国債券・利回り18%)、ここ数年ブームだったREIT(不動産投資信託)にしても大成建設とタイアップして仕掛けてた。
 本邦初という商品ばかり。

 「もうペーパーマネーは卒業」と180度転換。いきなり、インドネシア、ロシア、イルクーツク、南アフリカ、カナダ、そしてネバダ等の金鉱山経営をスタートしちゃう。
 すでに10年。10億ドルの埋蔵量を持つ資産家になってしまった。

 この2月末の「グレー・チューズデー(上海株式市場暴落に端を発する世界同時株安)」もみごとに的中!

 連戦連勝の投資人生と思われるけれども、メリルリンチ時代、28歳の時のした記念すべき初投資はビギナーズ・アンラッキー!
 みごとに失敗! しかも下落、暴落どころの話ではない。すってんてん。相場に強い知人が、「この株は絶対だ!」という鉄板銘柄を紹介。彼の言うがままに、500万円分の株式を買ってみた。金曜日のことである。それが忘れもしないが、3日後の月曜日の朝に電話がかかってきた。
 「3000万株の売り気配だ・・・」
 株価はあっという間に100円から13円に! 結局、投資銘柄は会社更生法が適用されてしまった。わずか3日間で500万円が紙くず。

 連戦連勝の投資人生? とんでもない、初っぱなからいきなりつまずいた男なのだ。
 「グレー・チューズデー」を的中させてから、テレビの情報番組に引っ張りだこ。その時にも指摘した予測はさらにバージョンアップしている。
 すなわち・・・。
?FRB(連邦準備制度理事会)が金利を下げる時、NYダウ暴落。
?米ドルはしばらく暴騰した後、時間をかけて下落。
?NYダウと相反して金(ゴールド)が暴騰する。そして、金を中心とした実物経済が投資の主役に躍り出る。

 NYダウ暴落はアメリカの金融株(ゴールドマンサックス、シティーバンク等)が主導して始まる。そして、いままで山が高かった分、谷も深くなる。
 日本は「失われた10年」くらいで済んだけれども、アメリカは元の喫水線に戻るまでにそれ以上の時間がかかる。米国民の間にはベトナム戦争以来の敗北感と虚無感を味わうのではないか、と予測していますな。
 
 アメリカの銀行株下落! けど、その前に彼らがやりそうなことがありますな。
 それはなに?
 それはね、この前書いたように、キャッシュと資産を持ってる日本の金融機関をどこか買収して、自らの株価下落を吸収することかもよ。
 まっ、目から鱗が何枚も落ちる内容でっせ。この本読んで、なにも感じなければ、あなたは投資家として成功するはず! 300円高。