2007年08月15日「瀬戸内少年野球団」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 やっぱ、これでしょ。終戦記念日にふさわしいのは。
 終戦の日、男はお先真っ暗。女は明るかった・・・生物として未来志向と過去志向の違いがはっきり出てました。

 この映画、去年、紹介しましたね。阿久悠さん原作でしたね。

 「私たち、野球しましょ!」

 そう、日本の戦後はジャズと野球でスタートしたと言っても過言ではありません。
 いずれも昨日までの敵が作ったもの。けど、音楽とスポーツは政治や戦争なんて超越しちゃうもん。愉しいものは愉しいんだよ。

 ジャズは、米軍の慰問でもよく演奏され、そして米兵の精神を鼓舞しました。
 グレンミラー大佐は精力的に海外を慰問して回りましたが、途中、フランスに行く予定で搭乗した機が行方不明になっちゃうわけ。

「こんばんわ。今夜はパリからの放送です。しかしグレンミラーはここにはいません。今からお送りする曲はクリスマスの今夜ご遺族に捧げるために作られた曲です」
 
 ラジオから流れた曲はグレンミラー夫婦には忘れられない1曲でした。「茶色の小瓶」ですね。奥さんの目から涙が溢れてきます。
 ジェームス・スチュアート演じる「グレンミラー物語」は傑作ですよ。


グレンミラーはいなくなったけど、グレンミラーの音楽はずっと受け継がれていく・・・。

 この映画は、グレンミラーの「イン・ザ・ムード」「ムーンライト・セレナーデ」がたっぷり。

 舞台は昭和20年9月の淡路島。国民学校の初等科5年男組。
 竜太とバラケツ(不良)。それに担任の駒子先生(夏目雅子・敬称略・以下同)を軸に物語がまわっていきます。

 戦争によって人生を狂わされた人は少なくないと思うけど、この竜太とバラケツもそう。2人とも父親が戦死してるわけ。駒子先生もその1人。新婚早々出征した夫は戦死。義理の両親からは次男との再婚をすすめるけれども、気がすすまない。

 A級戦犯としてシンガポールで処刑される元海軍提督も島にやってきた。命の洗濯というわけ。武女(むめ)という美しい娘を連れて。島の子供たちは進駐軍の手から守ってやろうと誓い合う。
 小説では、この元提督(伊丹十三)はどんどん俗物になってくんだけど、映画では凛として最後まで軍人らしく振る舞ってましたね。

 駒子は暴力でねじ伏せられたけど、再婚は頑として受け入れるつもりはないという覚悟を強く持つ。そんな時、バラケツと竜太は松葉杖の傷痍軍人に声をかけられる。駒子の夫正夫(郷ひろみ)。元・甲子園球児だ。



 バラケツの兄姉は教室でキャンデーをばらまく。争って拾う子供たち。そんな姿を見て、駒子は子供たちに野球を教えようと思った。手作りでグローブやボール、バットを作って練習する。野球の得意な正夫をコーチに駒子率いる江坂タイガース。けど、隣町チームとのゲームは惨憺たる結果でしょんぼり。

 武女の父がシンガポールで絞首刑になったという報せが島に届く。兄(三上博史)が待つ東京に帰らなければならない。島の思い出に、かつて、島で砲台調査に来たことのあるアンダーソン大尉が野球の試合をやろうと申し込んできた。竜太と三郎は武女の父親の仇を討とうと燃えに燃える。

 試合は思わぬ展開をします。エンタテイメント作品として最高の映画でした。
 この映画の主人公たちも生きていれば、70代。時間は悲しみだとか恨みだとかをすべて畳み込んで流れていくわけです。