2007年12月10日「環境問題はなぜウソがまかり通るのか1・2」 武田邦彦著 洋泉社 1000円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 今日は、ゴアさんにとって最高の日でしょうな。ブッシュになかばインチキ投票で負けて以来、苦節7年。
 ノーベル平和賞の受賞記念日ですもんねぇ。

 さて、もう1個、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC−−バチャウリ議長)」も共同受賞ですね。地球環境がトレンドなんでしょうなぁ。

 地球環境問題の解決は小さなことからコツコツと、というわけで、まずはペットボトルからいきましょうか。

 このペットボトルですけど、平成5年にはリサイクルされてなかったんで、年間12万トン分はすべてゴミになってました。
 これが16年になるとリサイクルが進みます。年間のペットボトル量も27万トンに増加。で、分別回収したペットボトルが24万トン。このうち、実は3万トンしか再利用されてないんだよ。

 結局、21万トンはリサイクル施設から「ゴミ」として出されていたわけ。

これ、リサイクルの実態?

 1本のペットボトルをつくるには、その倍の石油を使います。12万トンのペットボトルには24万トンの石油がいるわけね。
 もち、運搬するにしても、施設で処理するにしても、さらに石油を使います。リサイクルするに、さらにさらに3.5倍の石油がいるのよ。

さて、海外との比較はどうか?

 日本は欧米に比べれば、ペットボトルの分別回収率はダンチに多い。わずか6年で10%から60%に増えてます。
 アメリカは、当初30%だったのが20%に減少。「ヨーロッパはリサイクル社会だ」と信仰している人には初耳かもしれないけど、10%からスタートしていまでも30%程度。

 ということは、日本はダンチの優等生?

 それがちがうのよ。日本では焼却してもリサイクル、と定義してるから、こんな数字になっちゃうの。ふつう、焼却したら姿が消えちゃうわけで、どこがリサイクルなのよ。
 いまや、分別回収は国民運動。けど、生産量に対して、ペットボトルは3%、トレー等々は1%という有様。
 でも、法律でリサイクル推進法が決まってるから、膨大な税金を投入してます。これからも出費はずっと続きます。

 確認しますけど、これはゴミ処理の予算ではないの。「リサイクル」というわずか1〜3%しか寄与しない「工程」のために出費がどんどん増えてるわけ。けどね、ほとんどのゴミはリサイクルされずにそのまま焼却されてるの。

さて、地球温暖化の問題です。
「北極の氷が溶けて海水面が上がる」
 これ、ウソ。「アルキメデスの原理(浮力」)でおわかりの通り、氷が溶けても北極の海水は上がりません。

 京都議定書ですけど、「1990年に出していた二酸化炭素量を基準にする。そして平均6%削減する(2012年)」というものですよね。
 155カ国が参加する世界的なムーブメントです。で、ヨーロッパは8%、アメリカは7%、日本は6%、ロシアは0%という数値目標が決められてしまいました。

問題点1 なぜ1990年が基準なの? 1997年に締結されたんじゃないの?

これ、カラクリがあるの。
 結論を言えば、日本は欧米にまんまと引っ掛けられたとしか言いようがありません。すなわち、平成の「不平等条約」なわけ。これか、改正のために鹿鳴館外交でもやんなきゃいかんのだよ。

90年の二酸化炭素等の温暖化ガス排出量は、日本11.9億トン、アメリカ61.3億トン、英国7.4億トン、ドイツ12.5億トン。
 これから7年、議定書を作成するとき、3年後の予測がついてました。すなわち、日本13.4億トン、アメリカ70.4億トン、英国6.5億トン、ドイツ10.1億トン。つまり、90年を基準年とすると、日米は上昇するのに反して、英国とドイツはすでに削減可能の数値が出てるわけ。
 つまり、彼らにとってはものすごく都合がいいわけよ。だって、絶対にできる数値が条約に盛り込まれるわけだからさ。

日本? そりゃ大変ですよ。ただでさえ増えてるのに、6%も削減しなくちゃいけないんだからね。これは事実上、不可能の数字なんです。
 どうして、こんな条約結んじゃったの? 情報不足です。関係省庁のインテリジェンス不足。政治家にしても、バブル崩壊でなんら手を打てなかった橋本さんが総理だったもんねぇ。
 で、いまごろになってハンガリーから「排出権」を購入するはめになっちゃった。

でも、アメリカはもっときついよね?

あのね、条約というのは署名調印するだけじゃなんの効力も義務も発生しません。議会の承認を受けるという「批准」が必要なのね。
 で、アメリカは上院が否決。そしてブッシュは2001年に離脱を表明しました。
 一転、あのロシアは2004年1月に批准してます。なぜ? 1〜2兆円にものぼると言われる「排出権」を日本に売るためでしょう、きっと。

問題点2 「60年間で6メートルも海面水位が上昇する」とゴアさんが言ってるけど?

6メートルなると、サンフランシスコ、北京は水没。カルカッタとバングラデシュでは6000万人が家を失う、とか。こりゃ、『不都合な真実』だわな。

IPCCもそんなこと言ってません。IPCCでは、いままで30年間で7センチ上昇し、今後40年間に11センチ上昇する、と言ってるだけ。彼の独自見解なのね。

で、この『不都合な真実』ですけど、これは地球人類にとって不都合なわけではなく、欧米にとって不都合なの。
ゴアは「温暖化で氷が溶けて海面水位が上昇することの影響は少ない。問題はグリーンランドと南極の棚氷が崩壊すること。割れ目ができて氷のまま滑り落ちること」が不都合だと言ってるの。
 なぜか? メキシコ暖流が止まって、ヨーロッパが寒帯になっちゃうから。これは、マイケル・シュレジンジャーの説ですね。
日本人がイメージしている(朝日新聞のテレビCMにもあるような)ものとはちがうんです。

問題点3 ツバルがなくなる?

南太平洋ですな。かつて、アメリカやフランスはマーシャル諸島共和国のビキニ環礁で原爆、水爆の実験をやまほど繰り返しましたね。
 この実験のために、1946年から島民を強制移住させましたよね。
日本軍から奪った「領土」ですけど、珊瑚礁を埋め立ててはどんどん飛行場に変えていきました。
 結果、この地域は地盤沈下しちゃってます。

それと、海面水位の変化で「いちばん小さい」のは温暖化によるもの。30年間で11センチといっても、日常的な変化のほうがもっと大きいの。
 たとえば、月の満ち欠け。満月時は潮位が1メートル以上上がり、引き潮時は1.4メートルを超えます。この差は2メートルを軽く超えちゃうんですよ。さらに夏季には海水が膨張して海面が上がります。気圧変動もあります。長崎でも40センチくらいは水位が上がるのね。

 月の満ち欠けは一時的なもんでしょ? 地球温暖化は長期だよ?
 そうかなぁ。毎年、夏になると、水没するなんてニュース、聞いたことある?
 
 近頃お盛んな地球環境問題に一石投じる話題作。目から鱗の情報が満載。270円高。