2009年04月15日「フロスト×ニクソン」

カテゴリー中島孝志の不良映画日記」

 日経web連載の「社長の愛した数式」は連日15万人のアクセス。日経記事中ダントツの人気コラム。ですが、今回(72回)をもちまして終了となります。まる3年間にわたる連載でした。
 この間、日本も世界も経済はガタガタ。超円高、金融破綻、国有化・・・もう大変な時代です。

 で、今回は総括として「アメリカ企業にもの申す」と題し、米国企業の本質について分析。新たな提言をまとめております。ぜひご一読くださいませませ。
 なお、本連載をベースに大幅加筆した『「数式思考」の技術』が講談社より熱烈発売されております。こちらも宜しくです。


 さて、毎月14日は「東宝の日」で映画1000円。東宝=とう10・フォー4だからだって。めちゃこじつけだけど、ま、いいか。
 この土曜からいい映画目白押しだから、いまのうちに観とかないとね。なにしろ、アカデミー賞の「クイズミリオネア」じゃなくて「スラムドッグ$ミリオネア」もあるし、イーストウッドの話題作「グラン・トリノ」も封切り。けどさ、「スラム・・・」の宣伝予告編にみのさんが登場してきたのには参ったな。これ、百害あって一利なしだと思うよ。



 ニクソン辞任のニュースを見たトークショーの司会者。もしニクソンのインタビューに成功したら、英国とオーストラリアという地方区からNYCという檜舞台へ転身できるのでは? 視聴率を計算すると4億人もいる。
 これは商売になる。こんなくだらねえ番組ともおさらばだ、と考えたとしても不思議じゃないね。

 けど、インタビューつうのは相手のご機嫌取りじゃないの。「徹子の部屋」とはちゃうねん。食うか食われるか。言葉のボクシング。心理戦の格闘技。命懸けのね。
 それにディベートともちがうしねえ。つうのは、勝てばいいというものじゃないわけ。視聴率をとらないと成立しない。これが絶対条件。

 皆が聞きたいことを聞き出してこそのインタビューなわけ。相手が言いたいことを聞く場ではない。
 けど、みなが聞きたいことって、たいてい相手が言いたくないことだもんね。下手すると、政治生命が終わる危険性だってあるわけだしさ。

 さて、この司会者。ニクソンのインタビュー番組だから、全米ネットホークが飛びつくと思ったらしいけど、ああ勘違い。空振りでスポンサーは捕まえられず、手付け金20万ドルを自前で工面するはめに。
 手付け金ですよ。手付け金。ホントは200万ドルかかるわけ。しかも30%しか集まらない。

 もち、映画では描かれてないけど、ホントはフロスト側のプロデューサーはニクソンの側近に泣きついたみたい。ま、そこはまあ映画だから。

 けどさ、新聞やテレビの記者、ジャーナリスト、政敵、検察庁の連中が束になってかかってもできなかったことを、みのさんみたいなトークショーの司会者がやってのけたんだから、たいしたもんだよ。

 さて、究極のファイナルアンサーを1つ。
「ニクソンになるのとブッシュ・ジュニアになるのと、あなたならどちらを選ぶ?」
 共通してるのは、どちらもヘリでホワイトハウスを後にしたこと。どちらも国家を戦争に突入させたこと。少しちがう点は、ニクソンはウォーターゲート事件で、任期途中で曖昧なままに辞任したこと。ブッシュ・ジュニアはイラクにいいかがりをつけて戦争を仕掛けてフセインを殺し、石油利権を奪い、世界中に金融危機をばらまいたこと。

 そして、もっともちがう点は、ニクソンは米国市民に政治&政治家への失望の念を植え付けてしまったことに少なからず良心の呵責の念を抱いていたこと。一方、ブッシュ・ジュニアは「そんなこた、おれの知ったこっちゃあらへんわ」と脳天気でケ・セラセラであること。

 つまり、ハムレットの人生を選ぶか、与太郎の人生を選ぶか、ということです。ファイナルアンサー?

 元々、この映画は欧米でよくある舞台劇。その映画化なのね。
 ニクソンについては、以前、ご紹介したアンソニー・パーキンスの「ニクソン」のほうが正直、はるかによく描かれてます。ま、この映画はニクソン側ではなくフロスト側から描いてるからね、こうなんだけどさ。