2007年11月02日バーナンキのジレンマ

カテゴリー中島孝志の不良オヤジ日記」

 おととい、宣伝会議で講演したと書いたら、早速、どんな話したのか教えて、というメールがあちこちから届きました。

 テーマは「表現するビジネス」だったかな。ほら、人間てのは生きるためには表現しなくちゃなんない。赤ちゃんは泣いたり笑ったりして表現する。なんのためかというと、おっぱい頂戴、もっとかまって、というメッセージを伝えたいわけよ。

 私たちも思いをメッセージにのせて表現してるわけ。詩人は言葉で、作家は文章で、音楽家は音で、画家は絵とか色で。
 じゃ、ビジネスパースンは? もち、仕事で表現してるに決まってるよ。仕事そのものがメッセージなんだな。


ハーバード大学を首席で卒業。私は酒席で卒業。

 さて、日銀等の中央銀行の場合はなにによって表現してるんだろう?
 利率ですな。いわゆる、「公定歩合」というヤツ。これがメッセージ=意思の表現なの。

 昨日未明、FRB議長ベン・バーナンキが追加利下げしましたね。0.25%。0.5%の利下げしたのがついこの間ですよ。
 さて、この利下げにはどんなメッセージが込められてるんでしょうか?
 
 いま、アメリカが抱えている問題で、「通貨の番人」である彼が解決しなければならない問題は・・・たとえば、加熱しそうなインフレの抑制、サブプライムローン問題の沈静化などいろいろありますよ。
 仕事にはなんでも優先順位があります。いま、バーナンキが最優先に取り組むべき問題はなにか? 今回の追加利下げを見れば、彼の優先順位の筆頭項目が伝わっていきます。

 サブプライムローン問題の根は深い。そう判断してます。0.5%の利下げでは金融機関も個人も焼け石に水。だから、追加で利下げしたんです。

 利下げしたらインフレが加熱することは百も承知でしょう。
 インフレは怖いですよ。下手をすると、経済が減速する中、インフレになってしまえば、最悪の事態=スタグフレーションにもなりかねません。
 けど、背に腹は代えられない。あちらを立てればこちらが立たず。こちらを立てればあちらが立たず。ならば、どちらを立てるべきか? こんなジレンマの中、苦渋の決断をせざるをえなかったわけです。
 で、この決断は今後何回もしなければならないんです。

 いきなりドカンと下げちゃうと、ただでさえ金融機関の間で疑心暗鬼、「あそこ危ないかも」とマネー取引(インターバンク)がフリーズしかねない。で、微妙に0.25%の利下げにしたんでしょう。

 今後、第2の「メリルショック」がどこかの金融機関であるかもしれません。まだ、どの新聞をチェックしても、あの金融機関の名前が出てないんですよね。不思議だなぁ・・・。

 いずれにしても、12月にもう1度利下げがあるはずです。少なくとも来年の半ばまでは段階的に利下げが続くと思います。「もういいかな」というレベルになってようやく利上げに転じるんでしょうが、それがいつになるやら、神のみぞ知るです。

 サブプライムローン問題は金融機関、ヘッジファンドに深く食い込んで、アメリカのみならず、世界の金融マーケットの「地雷源」になりかねません。
 バーナンキはアメリカ発の世界恐慌は避けなければなりませんね。ありとあらゆる手段を使ってでもソフトランディングしたいでしょうな。

 ところで、11月はヘッジファンドの決算期が集中します。彼らは経済原則ではなく、決算のための数字合わせ=「益出し」のために売買を展開します。結果、思わぬ暴騰や暴落がNYダウ、商品相場、金価格、原油価格にも反映されるはずです。
 今回の利下げを反映して、瞬間的に金価格は800ドルを超え、原油は96ドルを超えました。しかし、これがトレンドなのか、イレギュラーの動きなのか、彼らの動きも見据えて判断しなければなりませんね。
 原油の高騰にしてもそろそろ収束するのではないか、と楽観的に考えてますけど、どうでしょうか?