2008年03月22日「地下鉄に乗って 特別版」 浅田次郎著 徳間書店 1680円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 ただいま戻ってまいりました。ごめんね。出張にパソコン持ってかなくてさ。更新も交信もできませんでした。

 今度の火曜日は「中島孝志の毒書人倶楽部」です。テーマは「あなたも本が出せる! 夢の印税生活実現講座」なんてものにしちゃってます。

 どんな話をしようかなと思ってたんですよ。出たとこ勝負もいいけど、ちっとは準備した振りしないとやばいじゃん。
 で、ざっと参考書籍になりそうなものを超速読でチェックしてたわけ。

 ダメですな。自分の性格知ってりゃ絶対にやっちゃいけないこと。つまり、1冊チェックし出したら止まんないわけ。 

 ラストだけは浅田次郎さんにしよう。『地下鉄に乗って』、もう1回読もう。 
 今度は講談社じゃなく、徳間書店のヤツにしよう。浅田さん自身が、巻末に書き下ろしロングエッセーを書いてるヤツね。

 あれれ? 映画と微妙にちがうじゃん。
 映画では長男はダンプに飛び込むんだけど、小説では地下鉄になってる。映画じゃ母方の苗字だけど、小説ではそのまんま。映画じゃ、最後にみちことオムライス食べるんだけど、小説じゃおにぎり。

 なによりちがうのは、映画には父親アムールの子ども時代の話がないこと。

 映画館で5回観たんだよ。で、DVDまで持ってるの。しかも特別バージョンのヤツ。今ごろ、気づくかね? ホントに忘却力の強さったらありませんな。

 ここだけの話だけど、読みながらウルウル来ますな。私も一応、父親だからだろうね。ついつい感情移入しちゃう。この前も『海辺の家』観てたらもうダメ。父子のわだかまりを軸に進むんだけど、やっぱウルウル来ちゃうわけ。



 わかっているようでわからないもの・・・その筆頭は、子どもにとっての親じゃないかね。とくに息子にとっての父親は近いようでいちばん遠い存在かもしれません。
 わかっているようで、ぜんぜんわかっちゃいない。お互いにね。

 「おめえ、死ぬなよ。おめえは要領が悪いんだから。お人好しなんだから。いいな、死ぬんじゃねえぞ。生きて帰ってこい」
 工場の社長が言うと、みなの声が静まりだした。出征の門出を送りに来たみなのこれが本音だったのよ。

 家族も会社の人間も、父親は運の強さと要領の良さで成功してきたと思ってる。けど、ちがうんだよ。
 運は強かったかもしれないけど、要領はそんなに良くはない。自分のことしか考えないエゴイストだと思ってるけど、みなのことをいつも考えてる。インチキ野郎じゃなくてホントは筋をきっちり通す・・・なに1つわかっちゃいないんだよ。

 自分から美談を作るほど図々しくない。おかげで誤解が解かれないまま父親は死に、息子も父親になっていく。この連鎖が父子の間にはあるような気がするなあ。
 そうか、これは浅田さんの『フィールド・オブ・ドリームス』なんだね。



 かつて、この「通勤快読」で映画『地下鉄に乗って』を紹介しました。
 でも、愛蔵版はいいねぇ。浅田さん自ら本書を書こうとした動機をいろいろ書いてくれてます。えっ、どんな内容かって? それは読んでのお楽しみ。愛蔵版にしか載ってないからね。
 DVDの特別バージョンにも、浅田さんのインタビューが収録されてます。

 いずれにしても、次回『中島孝志の毒書人倶楽部』のラストはこれで決まり。パワポ60枚使用のトンデモ講義。300円高。