2014年01月08日「中島孝志の聴く!通勤快読」 連チャン全公開です。。。

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 お年玉の連チャンね。今日の通勤快読でご紹介する本は『北極男(荻田泰永著・講談社)』です。メンバーはいつも通り音声でもご視聴できますのでよろしく。


 生き方に悩んで大学を中退。突然冒険を思い立って生まれて初めて行った海外がいきなり北極。

 以来12年間に12回も北極冒険。海外といえば北極しかしらない男が目指すのは日本人初の「単独無補給徒歩」での北極点到達物語でやんす・・・。

 なぜ山に登るんですか?
 「そこに山があるからだ」と答えた人がいましたね。著者の場合は「そこに何もないからだ」。。。

 たしかに。

 2000年から12回も北極圏に行ってます。つうか、海外は他に行ったことないの。北極しか知らないの。

 大学中退した00年4月、「北極冒険ツアー」に参加したのがきっかけ。カナダ北極圏の海氷700キロをソリを引いて1カ月以上歩くつうやつ。冒険家の大場満郎さんが企画したイベントです。

 それまでアウトドアなんてやったことない。テントで寝た経験もない。

 大場さんは山形の農家の長男。日本農業の行く末が心配で海家を視察。で、あちこち放浪するうち冒険家になっちゃった、つう人。

 テレビで見た姿がすごく魅力的だったわけだなあ。

 南極つうのは、中心に巨大な「南極大陸」があって、周囲を南極海がグルッと取り囲んでます。北極には大陸がない。「北極海」の周囲をユーラシア大陸や北米大陸が取り囲んでるわけ。

 南極大陸がどの国も領土・領海権を主張できない南極条約で守られた「どこの国でもない大陸」なのに対して、ロシア、アメリカ、カナダ、デンマーク(グリーンランド)、アイスランド、ノルウェー、フィンランド、スウェーデンの8カ国が北極圏に存在してますね。北極点付近だけがどこの国にも属していない公海なのよ。

 ここ数年、あれほど厚かった海氷が地球温暖化なのか溶けて薄くなってます。北極点付近だったら水深4000メートルの深海。その表面に厚さ3メートルの氷が薄い膜のように張ってるだけ。

 この海氷は常に海流に流されてます。その流れが以前よりも速くなってるわけよ。つうことは、分厚くなる前に北極海の外へ外へと流れ出しちゃう。成長過程でバラバラになる。強風の影響で氷が細かく分断されちゃうから早く溶けてしまうんです。

 北極を踏破しようとすると、極地は乾燥してますから水分を摂らないと血流が悪くなって凍傷になりやすい。1日5リットルは飲まんとね。

 厄介なことに、踏破しようとしても、北磁極周辺には大きなオープンウォーターが発生することが多いの。風や海流の影響で凍結した海氷が割れて海水面が大きく露出。幅10キロ、長さ数百キロ。アイザクセン岬からは北はロシアまで2000キロにわたって陸地のない北極海。。。

 「よし、ここまで。これから先は危ない」

 テトラポットを積み上げた2〜3メートルの乱氷の山。7大陸踏破とか南極踏破というレベルでは歯が立ちません。

 北極でまず最初にやることは寒さに体を適応させること。いきなりマイナス40℃の環境に飛び出せば確実に体は異変を来たします。精神もおかしくなります。
 で、装備品のパッキングや食糧の袋詰め作業。ルートの難易度や期間、気温、ソリの重量などを考慮して、増やしたり減らしたりして調整します。

 なにを持っていき、なにを持っていかないかを決めるわけです。あれこれ持ちすぎるとソリが重くて進めなくなりますから、「持っていったほうが安心かな?」というものは必要ありません。

 いざ村を出てしまえば、あとは無人の海氷が500キロ。

 いままで会った中で驚いたのはマイク・ホーンという南アフリカ出身のプロ冒険家。スポンサーは誰もが知る世界的企業ばかり。赤道上をめぐって地球1周してる人ね。

 印象に残ったのは、極夜で1日中太陽の昇らない真っ暗闇の中で起きた出来事。

 マイナス50℃の寒さでコンロの燃料が切れた。燃料ボトルを持ってテント内でキャップを開けた瞬間、コンロの種火に気化したガソリンが引火。で、テントと寝袋を焼失。いちばん近い村でも200キロ離れてる。
 で、ノコギリでイグルー(イヌイットが作る雪のブロックを積んだドーム状の家)を作り、通信機で要請した救助隊が来るまで耐え忍ぶ。

 そんなことがあっても計画を中止しない。装備を整えて再び歩き出す。プロですなあ。

 疲労と睡眠不足が極まると人間は歩きながらでも眠れます。もち意識は飛んでます。
 こういうときに事故は起こるの。ほんの些細なミスから起きます。疲れや集中力の欠如が当たり前のことをおろそかにさせるんですな。

 「1秒にも満たない時間だった。しまった!」
 思う間もなくボトルからガソリンがこぼれ出して銀マットに薄く広がった。一度引火したら消えません。
 なぜかゴム手袋をはめてる感覚。両手に火傷。もう旅は続行不可能です。で、救助を要請。

 この大失敗にはかなり落ち込んだみたい。ミスの内容ですよ。あまりの過失に呆れた。「北極を歩く資格はない」とキッパリやめようと考えた。

 失敗は慢心と油断のせいですよね。失敗を理由に北極をあきらめるなんて言い訳ですわな。で、思い直していまなお北極巡りの日々。

 私も行きたくなりましたよお。あれほど辺境巡りにはまってたのにもう20年。。。

 いつやるの? いまでしょ(古いなあ)。