2007年01月04日「小泉規制改革を利権にした男 宮内義彦」 有森隆著 講談社 1680円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 新年あけましておめでとうございます。
 仕事はじめ? まだ、休み? 私は去年からずっと仕事。毎年、そうなのね。2月くらいに芸能人の好きなワイハでも行ってくっかなぁ。本場のフラガール、見ちゃおうっと。♪デンデンデデンデン、レッツゴー♪

 「よくこんだけ調べたなぁ」というのが第1印象かな。
 小泉さんて、なに、やったのかなぁ。 郵政民営化? 郵政公務員の民間化? でも、それ、10年後の話でしょ? 財投の健全化? ふーん、国の財産を外資にどっさりもってかれちゃいましたよね。規制改革で儲けたのはアメリカの会社ばかりでしょ?

 いやいや、いましたねぇ。もっと儲けた会社が・・・それが宮内さんのオリックス。

 宮内さんて、「規制改革の旗手」という貌と同時に、「規制改革の受益者」という貌も持ってたんだ。びっくり。
 政府の諮問会議のメンバーとして10年以上にわたって規制緩和問題にかかわってきました。右手で規制緩和を進めながら、左手でその分野のビジネスをいち早く拡大する名人だそうです。「平成の政商」だって。

 けど、経営者としては甚だご立派ではないでしょうか。株主としては、がむしゃらに儲けてくれる経営者に投資したいよね。もっと早く知っとけばなぁ。

 「政商」としての底力を見せつけたのは、日銀総裁福井俊彦さんが村上ファンドに1000万円を拠出してたでしょ? この問題の時。
 2人とも参考人招致されたのよ。でも、断っちゃった。しかも理由がふるってる。
「民間同士の契約関係であり、国会審議にはそぐわない」だって。

 この人が問われているのは、「規制改革・民間開放推進会議議長」としての行動でしょ? 福井総裁の1000万円の出所がわかんないわけよ。資金の受け皿である投資事業組合もオリックスが用意したものなんだもん。
 ならば、議長という公職を辞めてから言うのが筋ってもんじゃないかなぁ。

 ここらへん、突っ込んで聞いてみたいよね。だから、参考人招致したの。けど、そうなると困る人が出てくる。この2人も困るし、小泉さんも困っちゃう。だから、詭弁を弄して断っちゃったわけ。

 村上ファンドが店開きしたとき、約38億円のシードマネーだったでしょ。この中、30億円がオリックスなんだよね。しかも、「元日銀副総裁」をアドバイザーとして紹介したのも宮内さんらしいね。
 この大物就任がどれだけ出資者に信用を得たか。1000万円はその見返りじゃないかと見られても不思議じゃないよね?

 宮内さんはさぞや、村上さんを高く評価してたんだろう・・・と思ったら、そうでもないらしい。
 「宮内という男はだれも信用しない。村上は宮内のバシリというのが実態」(オリックスOBの発言)
 だから、村上さんとしてはなんとしても宮内さんの傘から抜け出たかった。で、ニッポン放送の株の買い占めに走るわけよ。

 ニッポン放送株の買い占めについては、宮内さんは反対してたらしいね。TOBの資金協力も断ったみたい。これは村上さんには「想定外」。
 けど、不思議だね。規制緩和推進者としては、放送事業こそ、最大の既得権益を生み出す構造なんじゃないの?
 どうして協力しないの?
 そりゃそうだよね。こんな派手な乗っ取り劇を演じたら、村上ファンドの裏にいる宮内さんが黒幕としてやり玉にあがることは必至だもん。

 資金協力を断られた村上さんにしたら真っ青。どうする? 弾がないと撃てないよ。
 で、ある男に目を付けた。
 「ニッポン放送の経営権、ほしくない? フジテレビだって、あなたのものになりますよ」
 この誘いに乗ったのがホリエモン。可哀想に、資金を用意したとたん、村上さんはニッポン放送株を売り抜いちゃった。早い話が、ホリエモンがバカをみたわけよ。

 この一連のニッポン放送の案件で、村上さんは大儲けします。で、TBS、阪神電鉄の買い占めへと邁進するわけ。

 経営権を握る? そんなことは考えません。だって、投資ファンドは高く売り抜けてナンボだもんね。
 
 一方、宮内さんはあおぞら銀行の買収で、三井住友銀行とガチンコ対立。
 この時は、サーベラス、ソフトバンクと組んで上場させ利益をしっかり確保しちゃう。「政商」という表現が正解かどうかはわからないけど、天才的な商売人であることは確かですな。

 けどさ、宮内さんがこんだけ頑張ってるけど、オリックスという会社は日本一の借金会社らしいね。有利子負債4兆5700億円(06年3月期)。そんだけ、いろんなビジネスをしてるってことだよね。95年以来、格付けは「Baa3」(ムーディーズ)。これ、投機レベル寸前の評価なのがちと心配かな。

 さて、小泉さん時代には考えられないことがたくさん起こってますよ。
 たとえば、06年7月、金融庁はオリックス系の資産運用会社に、3カ月の業務停止処分。「日本版REIT(不動産投資信託)」の会社なんだけど、相手がオリックスだけに注目を浴びた事件だったよね。
 ある意味、今年、もっとも注目すべき人、注目すべき会社かもしれませんな。300円高。