2008年09月24日「今日、ホームレスになった」 増田明利著 彩図社 550円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 踊る大総裁選で、予想通り、麻生さんが勝ちました。まあ、はなからやらせ選挙でしたからね。ニュースとしての価値はない。
 朝日も日経もトップ記事は三菱東京のモルスタ、野村のリーマン買収の話題。当然ですわな。

 野村に引き取られることになったリーマンの連中(投資部門やアジア、中東)はホッとしてるでしょ。年収は落ちるかもしれないれけど、いつクビを切られるかわからないリーマンよりもずっと過ごしやすいってね。

 「いや、オレはハイリスク・ハイリターンが好きなんだよ」
 こういう腕に自慢のあるタイプも少なくないでしょう。で、辞めてあらたに職を探す・・・けど、どこも引き取ってくれない。職場がない。転職できない。
 「そういえば、昔、ぜひ来てくれと言ってたあの会社、どうかな?」
 連絡すると、とっくの昔に畳んでたりする。八方ふさがり。万事休す。後悔先に立たず、いやいや、後悔後を絶たず。

 本書に登場するホームレスもこういうタイプが多い。登場する15人は、みな、立派な大学を卒業して一流企業に入社して、そこそこ出世した人たち・・・。
 あのバブル崩壊後の「失われた10年」の間に人生ががらりと変わった。

 「どんなにバカにされようとあのまま会社にしがみついていたら・・・」
 「自分が甘かった。大企業病に罹っていた・・・」

 スキルといっても、大企業だからこそ活かせたもので、中小企業では宝の持ち腐れだった。
 就職先が見つからない。見つかったと思えば、年収は激減。半分にも満たない。けど、かつてのライフスタイルを変えられない。節約なんてできない。
 おかげで、住宅ローンも教育費も払えなくなちゃう。

 こうなると、キャッシュローンやサラ金のお世話になる。払えるはずがないのに借りちゃう。

 さっさと自己破産すればいいのに、変なプライドが許さない。ホームレスでコンビニの廃棄弁当を漁るくらいなら、お金のあるうちに自己破産して再起をかけたほうがベターなのに。

 ホームレスになってしまう人生、実は一手の違いかもしれません。あなたも私もボーダーラインの上を歩いてるんです。

 不動産会社の経営危機が叫ばれ、米国発金融恐慌が本格的に進む中、かつての勝ち組もその地位は安泰ではない。かつてのエリート、かつての大金持ちも板子一枚下は地獄。
 いま、年収200万円以下の貧困層が1023万人。22.8%(2007年度・国税庁)にものぼる。

 アメリカの年度調書に忠実に従ってきた小泉・竹中さんの政治の帰結がこの有様。
 いま、政治がすべきは本格的に行財政改革であり、公共投資ではありません。行政のムダ=公務員のスリム化。天下りの廃止。キャリアの天下りとムダな箱物行政は一体化してますからね。
 なによりも「ムダな人間」「ムダ遣いばかりする人間」を消し去ることが改革につながるわけですよ。300円高。