2009年06月05日警察・検察よりも裁判官の大失態だ!

カテゴリー中島孝志の不良オヤジ日記」

 18年ぶりに「娑婆」に戻ることができた菅屋利和さん。無実の罪で釈放。容疑が「幼女殺し」では無念のひと言でしょう。
「おめでとう」と記者たちから声をかけられてニッコリしてましたけど、はらわたは煮えくりかえるような状態だったでしょうね。

 当時の刑事、検事は絶対に許さない!

 このひと言に悔しさが滲み出ています。

 当時の刑事は「DNAだけでなく総合的な見地から犯人と判断した」といまでに述べています。つまり、釈放された今でも、菅家さんが犯人であると確信しているわけです。

 注意点は2つ。

・1つは00年7月に最高裁が上告を棄却して無期懲役を確定。で、02年12月、菅家さんの弁護士が宇都宮地裁に再審請求。これを地裁は棄却してること。ここがポイントです。もちろん、即時抗告。この5月(先月)に東京高裁がDNA再鑑定を決定。「不一致」という結果を受けて再審決定。そして釈放となったわけです。

・もう1つは、この間、犯人特定のポイントとなったDNA鑑定は、なんと91年11月の結果をベースにしていること。

 これ、警察・検察の失態と報じられてますけど、裁判官の失態ですよ。

 今週号の「週刊朝日」は奇しくも裁判特集。裁判員制度にスポットを浴びせたモノですけど、2人の大物弁護士を対談させています。これが見物なんですよ。

 「こいつが犯人だ」と刑事が特定した容疑者を刑務所に送らないと検察官の出世にかかわることはわかります。いわば、刑事はデータマン、検察官はアンカーマン。データを信じて裁判で勝てる「レポート」をこしらえるわけですからね。「ああこいつが犯人に決まっとるわい」と裁判官が納得できるレポートを巧く書ける検察官ほど出世するわけ。

 ところが、では、どんな「裁判官」が出世するかというと、これがとっても意味深なんですけど、少なくとも、「これは無実です」とけっして言わない人。つまり、前任者の裁判結果をひっくり返さない裁判官なんです。

 裁判官も、そして検察官も、正義の味方のようなイメージを持たれてますが、本質は「法務官僚」です。つまり、役人なんです。役人とはなにか? 公権力です。公権力とは公=官僚組織の味方であって、公民=市民・国民・住民の味方ではありません。

 ですから、もし前任者の判断をひっくり返すとどうなるか? その決定をした裁判官たちに恥をかかせ、検察を敵に回し、「いいこと」なんて1個もないんです。
 裁判官が検察の顔色を伺うってのも奇妙な話ですけど、同じ公務員ですからね。公務員住宅が一緒で休日にはテニスを楽しむ相手ということが少なくないんです。

 実際に、ある大きな裁判結果をひっくり返したり、国が不利になる判断をした裁判官はみごとに左遷されているとか。ま、詳細は「週刊朝日」を読んでみてください。

 菅家さんも捜査段階では例によって「自白」を強要されたんでしょう。警察は不当な尋問はしていないと言いますけど、だれも信用しちゃいません。

 悪いヤツはウソが巧いです。そんなヤツらを相手にするんですから、かなり厳しい取り調べをしなければ犯人をあぶり出すことはできません。ですから、警察・検察の言うとおり、100人中99人以上は「真犯人」でしょう。
 けど、中にはこういう低レベルの科学鑑定によって犯人に仕立て上げられた人間がいると思うんですね。

 科学・技術はどんどん進化します。「無実の人」は無実を訴え続けます。進化した科学・技術によって裁判の争点について黒白がつけられるのであれば、その点のみ再鑑定すればいいんですよ。
 そんな面倒な? コストがかかる? いやいや、菅家さんがあなたであったら人ごとではなくなりるでしょ。人権というのはそのくらい重視しなければいけないと思いますけどね。