2009年09月19日「一発屋大六」 城山三郎著 文藝春秋 610円

カテゴリー中島孝志の通勤快読 年3000冊の毒書王」

 一発屋ねえ。いろいろいますよね。一発屋の反対は? アベレージヒッターということになるのかな。そしたらイチローじゃん。
 ヒットして当たり前という存在と、もしかすると一発逆転?という存在。「意外性」を秘めてるから、打率王より、人間としてはこちらのほうが絶対面白い。

 ただし、それは今後も「一発」が期待できるという意味で面白いわけですけどね。

 芸能界だと、一発屋はたくさんいるよねえ。お笑い芸人だって、ゲッツがそうでしょ(名前忘れた)。復活したけど、猿岩石がそうじゃん。オッパッピーもなぜかしぶといよね。面白いかどうかなんてレベル超えてるけどね。
 鼠先輩もやめちゃうというし、小梅太夫は大丈夫かな。海の家でも要領悪そうだしなあ。

 歌手だと、やっぱメモリーグラス? 青い麦畑? マギー・ミネンコ? いけだひろこ、三木聖子、好きだったなあ。ストーカーソング「まちぶせ」も石川ひとみより三木聖子だもんなあ。『ぎんざNOW!』見てたなあ。
 でも、一発もないヤツより一瞬でもいいから天下を取った、一世を風靡した、というヒーローやヒロインのほうがやっぱいいわな。

 さて、『イチかバチか』(朝日新聞社)に続く2作目のユーモア小説がこれ。城山先生は『官僚たちの夏』ばかりではありません。

今田大六。37歳。私大卒の銀行員。「いつか一発あててやる!」という闘志だけはあるけれども、肝心の行動が付いてこない。ま、よくあるパターンですけどね。
 で、うだつのあがらぬ平凡な日々。

 ところが、「事件」が起きる。行内で1000万円が消えちゃった。で、その日、宿直してた大六に嫌疑がかかるわけ。参りましたね。で、結局、退職に追い込まれるわけ。
 以前、変な縁で知の合いになったカリスマ相場師、根岸剛造が大六を拾ってから・・・人生が大きく動きます。

 根岸紡績の根岸剛造を見ていると、絶えず爆発し続ける人生そのもの。一方、大六は紳士以上の紳士。ショックが起きてもいつも人格円満。
 大変だが面白い人生。つらいけど愉しい人生。つらくないけど愉しくもない人生。愉しさとは、つらさや苦しさがあってはじめて感じるものなのかもしれませんね。

 出版当時は「風刺小説」と言われたけど、いまとなってはみな知ってることばかり。昭和48年の作品。当時、城山さんは37歳。自分と等身大に、主人公を置いたわけですね。

 サラリーマンは気楽な稼業と来たもんだ・・・植木等演じる平均(たいら・ひとし)が活躍してる時代とはちとちがいます。いまや、ビジネスパースンの世界は平穏無事どころか、波瀾万丈、弱肉強食、コンクリートジャングル。リスクも多いけど、チャンスも多い。

 いろんな逆境が襲ってきます。悩んだり、困ったり、苦しんだり、怒ったり、悔しがったり、恨んだり、そのつど小さな悟りを開いて生きていく。人間そのものですな。そこそこ厚いけど、か〜るく読めます。やっぱ「官僚たちの夏」とはちがうわな。300円高。